まばたきをする体

レシピ、カット済み食材、調味料がセットになった「ミールキット」が便利だしおもしろい理由

0.ミールキットとの出会い

日々の献立に悩まされ続けている。

私はせっかちでめんどうくさがりで圧倒的に料理に向いていない。ケチで買い物も下手だ。

大人になって最初のころは料理という作業が目新しくて面白がってよくやっていたが、30代に入っててきめんに飽きた。

原因として、そもそも食事にさほど興味がないというのがある。

生来の鼻炎持ちで20代のころよくない点鼻薬を乱用したせいか、嗅覚がにぶい。においに敏感でないのでおそらく人並みにおいしいものがが楽しめていないんじゃないかと思う。それについては困ってはいないし、悲観もしておらず、そういうものだなあと思って暮らしているけれど、多分それであまり食事に熱心になれないんだと思う。

20代のころはフルで自炊だったのが、30代で冷凍食品や惣菜に頼るようになり、40代で出前も使い始めた。冷凍食品も惣菜も出前もすべてがすばらしく、ありがたく使ってはいるのだけど、ただいかんせん種類が限られてくる。

成長期の子どもたちの事も考えると365日、毎晩ある程度の代わり映えと栄養がある食卓にはしたい。

それで、いちどは辞めた生協にもう一度入ってみることにした。最近実家の母が加入して、むかしにくらべて惣菜や冷凍食品のバリエーションが増えたと聞いた。

登録をすませ、ウェブのカタログを見るとなるほど確かに以前私が登録していたころよりずっと惣菜の種類が多い。

それに、カット済みの肉野菜とレシピに調味料までがセットになった「ミールキット」も十数種類もある。最初、わざわざ調理するくらいなら、これもう惣菜を買ったほうがいいんじゃないかとも思ったが、種類の多さに楽しくなった。

うちは2人の小中学生と私の3人暮らしで、メンバー分を考えて買うとふつうに野菜、肉や魚を買って調理するよりずっと割高だけれど(怖くてどれくらい高いか計算はしていない!)、腹をくくってミールキットを3種類それぞれ人数分購入してみた。

前置きが長くなったが、そうして試したミールキットがめちゃくちゃ良かった。それに面白かったんである。

1.献立を考えなくて良い

いにしえから家庭に伝わる悩みといえば献立だろう。冷蔵庫に何もない、検討要素ゼロから献立を日々創出するのはとても難儀だ。

よく「冷蔵庫にあるもので献立を考えちゃちゃっと作る」ことが料理上手の生態として語られることがあるが、あれは料理の世界では上級とはいえないスキルだと思う。

冷蔵庫に何かしらあれば何らかは作れる。そもそも、無いのだ。冷蔵庫には。なにも。そこから考えねばならないのだ。

何を作るか。用意された十数種類からミールキットさえ選べば「考える」ことが放棄できる。これはすごい。

2.レシピに最適な買い物がすんでいる

何をどれだけ買ってくるかの検討ももう済んでいる。これがまたすばらしい。

私は普段ウェブメディアの編集部におり企画記事の制作に携わっているが、収録で何が大変かというと、買い物だ。物品の調達のウェイトがひじょうに高い。

コンテンツ制作の裏にはかならず重めの作業として「手配」がある。これはコンテンツが料理でもまったく同じで、先にも書いたが買い物をしないことには家の冷蔵庫にはなにもない。その調達が献立を選んだ時点ですっかり終わっているのがすばらしい。

しかも、揃っているのは添付のレシピを仕上げるのに最適の素材たちだ。

料理の苦手な民のひとつの弱点として「レシピ通りに必要なものが買えない」というのがあると思う。レシピに「いんげん」と書いてあっても、いざ買い物に行っていんげんが割高だとびびって買えない。

友人にとても料理の上手な人がいるのだけど、買い物にいちど同行したところ、季節だからといって安い小松菜をスルーしてフキノトウをカゴに入れていた。そういうことがどうしても私にはできない。

ミールキットならもしフキノトウが必要なレシピであれば問答無用で入っているわけだ。

3.野菜が切ってある「私ではない誰か」が作った感

ミールキットにもいろいろあるようだが、私の頼んだものは野菜がすでに切ってセットされているもの。

正直、こればかりは「自分で切ればもうちょっと安くなるんじゃないか」などと思ったものだが、いざ調理してみるとこれこそがミールキットという概念が生み出し成し得た部分というくらいだった。

パックを開封してごろごろ鍋だのフライパンだのに移す。自分の手がほとんどかからない。圧倒的に楽だ。大変にありがたい。

しかし、あらかじめ野菜が切ってある利点の肝は「楽さ」ではない。

適切な切り方がされているため食べたときの口当たりがとても良く、これが「私ではない誰か」が作ったように感じさせるのだ。

多くの人が常々「あ~、誰かが作った飯が食いたいな~」と思って生きているものではないか。その良さがここにある。

火にかけたのは私自身であることから、不思議な感覚でとてもおもしろい。

4.味の強弱付けで得る自作の充実感

ミールキットのことは以前から知っていたが、これまで手を出さなかった理由として「ここまで人の手に委ねるなら惣菜と同じでは」という思いがあったからだった。

だが調味料の量を自由に調節できるということが実はとても大事だということに実際調理をして気付かされた。自分の食べたい味にする満足感、料理をしているという充実感につながる。

また単純に、料理の工程のなかで調味料を合わせることほど面倒で難解で失敗につながるパートもない。実際私はクックドゥやらなにやらスーパーでしょっちゅうタレを買っている。

ミールキットはつまり、いつも買ってるタレになんなら食材が付いている、という事態でもある。まったく強い。

5.賞味期限にはびびった

と、以上がミールキットのスーパーハッピーストーリーなんだけれども、実は今回はじめて注文してみて、ひとつ想定外だったのが賞味期限だった。

注文したキットはすべて冷蔵保存で生肉がセットされている。その関係で、配達された3つのキットの期限がすべて配達翌日だった。よく考えれば(あとよく注意書きを見れば)分かることなのだけど、気づけなかった。

あわてて配達当日、翌日、翌々日(最終日だけ賞味期限1日切れ)で食べきった。

うまくいったら毎週4セット買ってウィークデーのうち4日をまかなおうとすら思っていたのだけど、そこは要検討になっている……ということをTwitterに書いたら、オイシックスは賞味期限がコントロールしやすいと教えていただいた。

オイシックスは今買っているものよりもだいぶ高いみたいだけれど、エンゲル係数と相談して試してみたいと思います。

6.そして食事は続く

毎日スーパーに行く頃があって、週末大きなスーパーでまとめ買いする頃があって、生協で毎週注文する頃が、ネットスーパーで必要なときにまとめて注文する頃が、これまでの食事人生でいろんな頃があった。

今回すっかりミールキットにすげえすげえとお祭り騒ぎになってはいるけれど、これはかつてネットスーパーを体験して感じた一時的な興奮にも似ている。

そして食事は続く。手配も続く。いろいろ試して便利だとか美味しいとか面白いとかいいながら暮らしていく。

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