まばたきをする体

身の丈に合わないことを企てていたせい

昨日の夜、娘の髪の毛を乾かしていて、急に、あ、これはだめだ! 目覚めてそのまますぐに駅前にある、大きくて予約の取りやすい美容院に電話して予約を入れた。

娘は前髪のないロングヘアで、バレエをはじめた3歳のころから前髪を伸ばし始め、あとは後ろ髪を散髪するくらいでずっときた。

不器用な私はいちど息子の前髪をひどいことにしてしまったことがあり、それで子どもたちは1000円カットに行っていて、娘のオーダーはいつも「5センチくらい切ってください」みたいな感じ。

安くて早くやってくれるのがすごくありがたくて助かっていたけど、娘のこの毛量、これは1000円カットでは間に合っていないと急に思った。汚いわけじゃないけど洗い切れていない。美容院でしっかりすいてもらって、シャンプーとドライヤーを少しでもしやすい頭にしないとまずい。

予約は午前中を取った。娘を起こしてご飯を食べさせ一緒に向かう。ネットで料金表を見ると思ったよりも安いので、ついでに私も前髪のカットとシャンプーをお願いした。

娘は道中シャンプーを嫌がっていた。「いつもみたいに切るだけでいいよ、シャンプーはいい」という。はじめてなので引っ込み思案になってるんだろう。

大丈夫、すごく気持ちいいしどうせいつかやるなら早いうちに体験しておいたほうがいいよと勇気づけるが、「えっ! 美容院のシャンプーっていつか必ずやらなくちゃいけないの?」と、確かに必ずというわけじゃないか。でもできることは増やして、世の中に慣れておくとあとがぐっと生きやすいと思う。

変な紙を顔の上に乗せるのがおもしろいからとさらに説得し、うやむやのままもう美容院についた。

ここは頼もしい美容院で、まずでかい。鏡が何面もあってたくさんの美容師さんが働いている。そういう融通があるからか予約が取りやすいし、偉い美容師さんを指名しない限りずいぶん安くやってもらえる。娘が手始めに行くのにちょうどいい。

娘と私、隣の鏡で別々の美容師さんについてもらった。じゃあシャンプーしましょう、と、娘は自然に連れていかれ、私が前髪を切ってもらっているうちに神妙に平気な顔で戻ってきたのだった。

娘の髪、すっかりきれいになった。量が半分くらいに減り、これなら家でもなんとかシャンプーとドライヤーができそうだ。毛先に丸みをつけてもらって「髪型」という感じの頭になった。

これまではなんというか、髪! 髪が生えてます! という、迫力があってそれも良かったといえば良かったんだけど、頭髪が教養を得て理性的になり成長したように思えた。

美容師さんたちもにこにこ「すっきりしました!」と嬉しそうにしてくれてうれしい。

よかったよかったと、昼のホットケーキの買い物をして帰宅。娘がバニラアイスを買おうと良いアイディアを出してくれた。

帰っておなかをすかせていた息子とホットケーキの準備をする。息子は骨折して腕を吊っているが料理をやりたがる。

バナナを輪切りにするとか、ツナに玉ねぎを入れるとか、どうってことないけど私だと省略するような手間も二人で作業しているとやる気になる。

食べておいしくて、しかしバニラアイスのことを忘れていて結局食後に厳密に3等分して食べた。

午後は子どもたちが塾に行く間に部屋やパソコンの片づけをした。

片づけをしながら最近しばらくずっと企んでいることを、また考えていた。

先日友達に会ったときにすごく話が盛り上がって、かなり大それたことをできるできる! という気になった。

実際できるのかもしれないけど、それで妙に浮ついて、細かくしくじることが増えていた。人への連絡が漏れていたり、重要なTODOをあぶなく見落としそうになったり、なんだかおかしいなと思っていたが、まあ大丈夫だろうと、そんな「まあ大丈夫だろう」フィクションの世界であれば「大きな失敗」のフラグでしかないわけだが、なんと私の現実もこの「まあ大丈夫だろう」が失敗の、あからさまなフラグであった。

すごく大事なデータを、まるっと消してしまった。

リカバリ不能なタイプの消し方で消した。

普段は何度もチェックしてからやるような消去の作業を、まあ大丈夫だろうと気軽に実行して、あとで気づいて真っ青になった。

気を取り直してご飯は食べて、それから、うお~~~、ゴロンゴロンゴロン。床を転がり悔やむ。息子に愚痴って内容を話すうちにクリティカルなものではないことだと諦めもついたが、それにしても実損がある。

身の丈に合わないことを考えていたばちだ! と思った。

ばちではなく、ただのどでか凡ミスなんだけども、すがるように。

大それたことを考えていた、これはその軌道修正なのだ! みたいなことにしてなんとか寝た。

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