まばたきをする体

骨は2秒プロに見せる

夜中物音がする。

寝たまま(物音がするな)と気付くだけ気付いていて、徐々に目が覚めて(なんだろう)という気持ちにやっとなった。それからまた「どうした?」と声がでるまでしばらくかかってしまい、物音をさせた人は去ったあとだった。

それからしばらく目が覚めてしまいごろごろする。でもこういうとき寝られなくて朝になってしまったということが私にはなくて、だいたい起きるべき時間の1時間くらい前にすっと寝る。寝つけるのはありがたいことだけど、起きるつらさがいつもと変わらないのが悔しい。

夜中の音は息子が保冷剤を代えにきた音だった。起きた息子に聞いた。昨日手首の骨を折って息子は整形外科でギプスをはめてもらった。腫れて熱を持つから冷やすように言われ、少しずきずきするので冷やしたそうだ。

良くなる筋道が見えたのでもはや息子自身も私もまったく怪我を心配しておらず、ただ、生活の上の不便だけが残った感じ。利き手が助かったのでうまい具合にパンにはちみつをぬっていた。

娘は兄の怪我にはまったく気にかけるようなところがない。そもそもうちの兄妹は家族への人情に乏しいところがある。

子らは出かけていき、私は会社へ。業務移管というので会社を業務ごと移ることになって引っ越しの作業をした。私は普段ウェブメディアの編集を仕事にしていて、それで記事を作るのに買ったものがロッカーからあれこれ出てくるものだから次々引っ越しの段ボールに詰めた。

ああ、般若のステンドグラスだ。

これも丁寧に梱包し次の会社への荷物に入れた。久しぶりに出てきて眺めたが本当に良いものだ。だいいち、意味が分からない。いや、意味は分かるか。般若をステンドグラスにしたらかっこいいぞ! みたいな思いは伝わるものな。

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捨てるタイミングなど今後の人生にないだろう。これをわたしは一生所有し続けるのだと思うと人生が誇らしい。

夕方、早退して息子と家で待ち合わせた。今日も整形外科へ行く。

息子は一体なにをするのだろうと不安がっていた。昨日固定する際のけん引はかなり痛かったらしい。

先生は包帯をとって様子を見て「ああ、これは大丈夫ですね」といった。

それから、しびれたり異変があったらすぐ来てください、と、それだけだった。身構えて挑んだ息子は拍子抜けのようだったが、私は思い出していた。

骨は2秒プロに見せる、それがとても大切ということを。

娘が骨折したときもそうだった。かなり細かく何度も医師の診察を受けた。先生は見るとぱっと「良いですね」とおっしゃる。娘の骨折からはもう数年が経つが、今も半年にいちど成長に治した骨がついていけているかを2秒診てもらいに通っている。この、プロの2秒がめちゃめちゃ大事なんだろう。

考えてみれば、じわじわ大きくなる過程の骨を大きくなりながら治すのがすごい。壊れたまま走ってる車を走らせながら治すみたいなことだ。

帰ると娘も帰宅しており、最近クラスのみんなで踊っている「へんな踊り」を見せてくれた。娘の元気はもちろん、クラスのみんなも元気なのが伝わった。あと動きが単純にへんなので笑う。

娘は基本的に部屋でマンガや本を読んだりゲームをしたりしていてあまり居間にいない。私も一人ですごすのが好きなのでありがたいけどさみしくもあり、だからこうして登場して踊りを踊ってくれると嬉しくてきゃあきゃあする。

それから骨折の息子がシャワーを浴びるのに腕にビニール袋のカバーをしてやると、「なんびとたりともこのビニールのなかには入らせない」と意気込み風呂へ向かっていった。

夜は資産運用を考えて麻雀ゲームをやってからファーファのかわいい動画を何回か観て寝た。

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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