まばたきをする体

賛同しめしがたき主義主張

朝、無理に起こされ機嫌の良くない娘は顔も髪も逆立っておそろしい。もともと鋭いタイプの顔をしているので怒っていると顔つきの悪さもいよいよだ。

ぷりぷり食卓に座ってパンをかじろうとするので、起きたらまず口をゆすぎなよというと「やだ」といった。

やだってことあるかな。

「わたし、口をゆすがない主義だから」

賛同しめしがたき主義主張!

虫歯になるからと強く言うとしぶしぶゆすいでパンを食べていた。たべるうちに機嫌も良くなっていくようだった。

子らは学校へ行き、私も仕事の用ででかける。長いタイトスカートをはいたら歩幅が狭く、私はせっかちで一歩の幅が普段は広いのでもどかしくてスカートの伸縮をめいっぱいまで使って歩幅を広めたところ伸ばす動作で足が疲れた。生地も伸びた。

用事は午前のうちに終わり在宅勤務に戻るべく自宅へ。道に刺さっている魚を見かけて写真を撮る。

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それから乗り継ぎの途中にサンマルクカフェがあって、チョコクロワッサンのことを思い出し寄って買った。

友人にあれが好きな人がいて、店を見るとつい買うのだと聞いたことがある。サンマルクカフェを見かけたらついチョコクロワッサンを買ってもいいのか! とそのとき思わされた。

私もチョコクロワッサンはあれはうまいものだとは常々思っていたけど、その「うまいものだ」という気持ちをより強くもち、店を見ればわざわざ入り買う。おいしい物が好きな人はそういう丁寧な購買行為をする。

真似して私も今日は買いました。やったやった。こわれないようにやわらかくカバンに入れて、家に帰って食べているといつもより早く息子が帰ってきた。

「ああっ!」

何か食べている人がいるとうちの人たちはおおげさに驚き大事件として扱う。

「なんですかそれは!」

チョコクロワッサンです、チョコレートが苦手なあなたには不要のものでしょう、言うと苦々しい顔をして息子は去って行った。

午後は打ち合わせなどありずっとリモート。終えて晩は昨日のシチューの残りがあるので支度が楽だ。スーパーでは肉野菜が不要なのでバナナと麩菓子とヨーグルトと卵を買った。

食卓についた娘が小さな白い小石をつまんで持っていて「これお兄ちゃんのじゃない?」と聞いている。

「いや、俺んじゃないな」「そうか、お兄ちゃん石好きだから」「石は好きだけどそれは違うな」

息子が石好きというのも初めて知ったので、へえ、と思った。そういえば小学2年生の夏にはあちこちで石を拾って写真を撮って自由研究にまとめていた。石のキャラクターを作って模造紙に書いて吹き出しでなんらかをしゃべらせており、確かに愛があった。

しかしそもそもなんで部屋に小石が落ちているのか。誰のものでもないようなのでそこらに飾って食事をはじめた。

食後に子らはヨーグルトとバナナと麩菓子を「あるから」という理由で食べており、あればあるだけ食べる地平には「有」という状態は不要なのではという思いをあらたにする。

私は麩菓子が好きなので麩菓子だけもりもり食べていると娘に個数を確認され「3個食べました」というと食べすぎと怒られた。

きみらはヨーグルトとバナナを食べたじゃん、私は食べてないから麩菓子をたくさん食べてもいいでしょうよというのだが、お母さんは普段からヨーグルトもバナナもあっても食べないから理由にはならないとのこと。

やりあっていると息子が登場し、この人は昼にチョコレートのパンを食べていたぞと娘に告げ口までされる。

娘は絶対に近々自分にも食べさせるようにと言うので承知した。娘はきっと好きな味だろう。

部屋着に着替えると歩幅が広くなった。

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