まばたきをする体

世の中たいていのことはうまくいかない、なのに

中村屋のカレーまんがあるという稀有な状況だった。

うちにはだいたいカレーまんはない。私が買わないから。買うなら肉まんとあんまんのセット、よーし今日は! という日もピザまんどまりか。そもそも中村屋のようなブランドものは1個増量の上賞味期限間近で値引きにでもなってないとなかなか。

だが今日はカレーまんがある。昨日いただいた。

手にとればまんじゅうの下にくっついている紙にやなせたかし先生のイラストが描いてある。カレーまんだけこんなの特別すぎないか。

ふかして皿に分けた。肉まんとセットになっているやつで、寝床の娘に聞くと布団の中から「肉まんいっこでいい……」というので私はカレーまんを取った。

あれ、こんなに辛かったっけ。

「結構辛いね!」と思ったままを隣の息子に伝えた。息子も辛いねと言っていた。

よぼよぼの娘は肉まんを食べて子らは出かけ、私は今日も在宅勤務。

昼には息子が帰宅したので2人であんかけスパを食べた。名古屋のあのやつ。レトルトのソースも太いスパゲティもあった。うまいうまい。

午後もやーやー仕事を推し進める。課題が出ているらしい息子が、居間のちゃぶ台と自室の勉強机を行ったりきたりしていた。居間の方には社会科の一式が広げてあり、自室には英語の一式が広げてある。

居間にきて社会科をやる、自室で英語をやる、そのへんで寝転がり休んでゲームする、これをこまめに繰り返しているらしかった。

娘が学校から帰ってきた。ランドセルを置いてすぐ遊びに行くという。

「どこ行くの?」と聞くと、聞いただけのつもりだったのがどうやら咎めの空気が含まれてしまっていたようで娘は「えーっ?」と(どこか行ってはいけないのか?)と語調が驚いている。「公園だけど」

「いや、いいんだよ、習い事のカバンもってきなよ、遅れないでね」と声をかけた。「はーい」と出て行った。

「どこ行くの?」「えーっ?」の二言にあきらかに両者了解の上で含まれるニュアンスがあって、言外というものを目で見たなという感じがあった。

夜はホットプレートを使って たこ焼き。

先日ホットプレートを買ってからもう3回目になり、焼きの作業にもそろそろ子どもたちは飽きるころだろう、ということは私が今日は一手に焼ける! しめしめ……きれいにまあるく焼きたい心をあからさまにしていたが、はじめると子らも熱心に焼いた。結局競うようにみんなでたこ焼きを丸めた。

序盤、これはもうぐずぐずだ、という状況でも最終的にきれいに丸くなるのだからすごい。成功体験そのものだ。

世の中、たいていのことはそうはうまくいかないものだ。なのに。

たこ焼き以外でこんなにうまくいくことってほとんどないんじゃないか。

ただ、最後の最後にタコはもちろんネギも天かすも紅ショウガも、具が何もなくなり生地だけで焼いてみたら驚くほど寂しい味だった。できあいのたこやき粉を使っているのでだしの味はするのだけど、それにしてもそれは無だった。

夜は息子がなにも見ずにドン・キホーテのペンギンのキャラクターを描くというので応援する。

もう何年も前にノベルティでもらったボールペンがあるのでそれを正解としてこっそり見た。ポイントはサンタの帽子をかぶっているというところなんだな。意識したこと全くなかった。

息子は案の定帽子をかぶせ忘れて描いており、何かが足りないと気づいているようなのでヒントとして「12月」というとピンときていた。ピンとくるのかよ。記憶してるんだなドンペンくんの姿を。

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読んでいる「あなたを閉じ込める『ずるい言葉』」という本の裏表紙に「ずるい言葉」がたくさん書いてある(たとえば、「はっきり言わないあなたが悪い」「そんな言い方じゃ聞き入れてもらえないよ」のような人をやりこめもやっとさせる言葉)。

それを娘が読みあげているうちに「ずるい言葉」を通り越してただの嫌味を言い合う大会がはじまった。

より嫌らしく言おうと娘と私で張り合った。

「それくらいもできないんですかねえ?」
「そのやり方、おかしくないですかあ?」

私はそんなふうに言う奴いないくらいに嫌らしく言うのだけど、娘は嫌味ではない風にさわやかに言い放つことでより嫌味たらしくする戦術を取っておりなかなかギミックがきいている。

意味なくただ人を攻撃し嫌な思いをさせる目的で発せられることばというのが存在する。浴びせられてしまったときは「これは攻撃でありなんらか行動をうながす目的はなく単に自分を傷つけ嫌がらせるために発せられているのだ」と気づくことが本当に大事で、それに気づかないと言葉のとおり受け取って自責を感じつらくなってしまう。攻撃はコミュニケーションではない。

そういう仕組みを娘はもう知っていそうだ。

寝る前にマンガの「きのう何食べた?」を読んだ。ずっと読んでいたのにどこからか追えなくなってしまっていて気づけば読み逃がしたままの単行本がもう5巻分くらい出ていた。

青菜の付け根の処理(根を落として付け根は十字に切るか、根を付け根ごと切り落とすか)くらいのことが一大事として描かれており本当に興奮する。

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