まばたきをする体

たんけんぼうし

鹿の肉を茹でる。

かたまりの肉のもらったやつがあり、先日からゆっくり冷蔵庫で解凍しておいた。2時間くらい茹でて酒とみりんと醤油の漬け汁に漬けると良いというネットのレシピを見た。

子らを見送ったらもう茹ではじめ、仕事をすすめるかたわらで茹で続ける。

火をとめ、昼休みにすこし切って塩で食べたらそれでもうおいしい。

しかしここは塩でなく漬け汁を作ってジップロックに入れて空気を抜いて、よしよしよしよし! はっはっは。冷凍庫の中にあってずっとどうしたものかと思っていたから、なんとかできてよかった。食材を無駄にしてしまうのではないかという恐れが世の中で一番こわい。

いつかめずらしい、郷土料理に使うようななんだったか乾物ををもらって人が大喜びしているところをみたことがある。私だったらどう調理していいかわからずまず困惑してしまうし、そもそも私には誰も難しいものをくれない。喜んだその人は料理の得意な人で、料理が得意なのも憧れるし、あの人は料理が得意なのだと目され人から珍しい食材をもらいそして喜ぶことにも憧れた。

午後も仕事をすすめているうちに娘が帰ってきて「おかあさんの たんけんぼうし を借りたいんだけど」という。

たんけんぼうし……?

「探検家みたいな帽子があるじゃん」

ああ~~、たんけんぼうし、「世界ふしぎ発見」のひとしくん人形がかぶっているやつのイメージか。なるほど私は濃いベージュの、一周ぐるっとつばのある帽子を持っている。あれはたしかにちょっと たんけんぼうし だな。

ひとしくん人形のかぶっている帽子をかぶって今まさに探検している探検家は多分いないんじゃないかと思うんだけど、あれは探検用の帽子だと、小学生の娘も大人の私も共有しているのは良いことだ。どろぼうはいつだって唐草模様の風呂敷を背負っていてほしい。

いつものところにあるから好きにもっていっていいよというと、娘はゲゲゲの鬼太郎の主題歌のふしで、「げ、げ、ドゥユワナダンス」といいながら塾へ行った。

息子も帰って来てからすぐ塾に行って、すると実家の父母がやってきた。

今日は私に夜出かける仕事があるので保護者として来てもらった。母はハンバーグやら総菜やらあれこれ作って持って来てくれていた。

孫たちはまだ塾から帰らない。いっぽう私はもう少しでかけるまでに時間があるので居間のちゃぶ台を父母とかこんでで座りNHKのニュースを見ながら、母持参の枝豆と父持参のさきいかを食べた。父母はビールを飲んだ。

母は死んだ祖父が大量に保管していたテレフォンカードを最近NTTに電話代金の支払いにあてるため送ったのだそうだ。そういうことができる話は聞いたことがあったが、本当にできるんだ。

ただ、基本料金の支払いには当てられず、あくまでも電話をかけた料金についてのみ使えるんだそう。最近父母はスマホを持ち通話もLINEを使うことが多くなかなか減らないと、今後月々そこから電話料金だけ差し引かれるようにしたから、おそらくこれで死ぬまでNTTに通話料金は払わなくて済むのではないかということで、老人の「死ぬまで〇〇しない」の話はリアルであって比喩でない。

私は最近新たにやっているギャンブルの話をした。父にそれは間違いなく損をすると言われ、損をするのが好きなのだと説明した。

母に炊いたさつまいもにあんこをからめたやつも持ってきたよと言われて食べて、出かけた。

渋谷に行く。現場に行く前に食べようと決めていた、好物の汁なし担々麺を食べた。家で父母と話をしすぎて出るのがおくれてしまい、いそいで食べたが、こちらから味わわずとも向こうから味がくるタイプの料理なので問題なく満足した。

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仕事はイベント登壇で、ほがらかで物事に対し知見の豊かな方々にかこまれ、楽しくて楽しくて、帰りたくなさが過去最大級に高まるもじゃあ今日はここで寝ますねというわけにはいかないのが私のような普通の人の日々というもので、帰った。

鹿肉を父母に分け忘れてしまった。

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