まばたきをする体

ケーキ屋は混むのではないか

鹿肉がある。

両手にいっぱいくらいの立派な塊で、山に暮らす子らの父が近所の猟師さんから物々交換でいただいたのを先日食べ切れないと譲ってくれた。

シチューにすると良いと聞き、ルーは早々に買っておいたのだけど冷凍したままになっていた。祝日だじっくりやろうと朝思いたった。

しかしまるっとこれが、冷凍になっているのだった。なんとなく朝のうちに常温に出せば解凍されるだろうと思ったが、いや、これは半日では無理じゃないか。

調べると解凍は常温ではなく数日かけて冷蔵庫でやるべきとあり、うお、数日。料理勘がないのでこういうことが本当に多い。

料理もそうだし、慣れない手作業はなにもかもが思ったようにいかないのがすごい。本当にきっちりなにもかもで、手芸も工作もそうだ。

鹿の肉はおとなしく冷蔵庫にうつして様子をみることにした。

と、ここでよくないものをネットで見てしまい一気に落ち込む。誰かに言えばきっと誰もが「たいしたことじゃないし気にしないでおきなよ」というくらいの話なのだけど落ち込む。

子らに相談するとそのまま「たいしたことじゃないし気にしないでおきなよ」と言われ、もうちょいなぐさめちょうだいよと思うがせびるのはよして、麻雀ゲームに逃げた。

そして、これはケーキだなと思った。口を体を甘やかすものを食べよう。

本日、昼ご飯はケーキです。

居間の戸をバーンと開けて宣言した。

お、おう……。という感じの子どもたち。

隣街にコージーコーナーがある。ネットで商品一覧をみんなで観た。

「ひとり二つ食べる。それで昼をすます」
「えっ! そんなことしていいの」
「栄養がやばい」
「じゃあ……ケーキはひとりひとつにする。あとはパンとサラダをたくさん」
「冷蔵庫にリンゴもあるね」

それから息子がハッと日めくりカレンダーを見て、今日は天皇誕生日だ、と言った。誕生日という言葉が刷り込み的に脳にケーキだ! と思わせていたとしたら、ケーキ屋は混むのではないか!? というが、そんなことあるかな。

3人分のケーキのリストを持ってバーン! と家を飛び出した。

息子の言う通りケーキ屋は混んでいた。言う通りの理由ではないと思うけど、混んでいた。

静かに列に並び、選んでいたとおりのケーキを買うはずが、自分の分はコージーコーナーの名物のでかいチーズスフレをつい買ってしまった。ケーキといえばケーキだけど、いわゆるショートケーキに代表されるようなケーキではない。

今日はケーキを食べるぞ! という気分を自ら破壊したような恰好に。

スーパーに寄りサラダの野菜とパンも買った。

帰って食べた。うまいよう、うまいよう。子どもたちの冷静な判断により用意したサラダがとても良かった。

それで理解したが、子どもたちにはここにスパゲティの一杯くらいあってしかるべきだったのだ。

考えればわかりそうなことをやってみてやっと判明させている。鹿肉が解凍できなかったのと同じことがケーキでも起こった。渋滞してるな。

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午後は図書館に行ったり、買い物に行ったり、コンビニに発送に行ったり、やることをやっているとすぐにすぎて、夕方から仕事の収録があってリモートで出た。

私が世話になる仕事の現場にはいつも機嫌のよい人しかおらず、これは本当にすごいことですごい。すごいことですごいとしか言いようがない。楽しくて一気に元気が出た。

終えて買い物して準備しておいたすき焼きを煮て食べた。

夜になって少し冷えるのでここ数日あたたかくて用なしになっていたストーブをつける。

すると息子が「ちょっと! バランスクッション(中に空気を入れてつかうゴムのクッションがうちにはあるのです)がぱんぱんになってるから見て!」という。

ストーブの吹き出す熱気が少し当たるくらいの場所に置いておいただけなのに中の空気が膨張したらしい。おお~、とみんなで見て、並んで上に立っていつもよりパンパンの感触を楽しんだ。

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