まばたきをする体

本当にずっと見ていたつもりだった

フライパンで肉まんを蒸した。

蒸しあがってそれぞれの皿につけ、フライパンに張ったお湯をジャーとシンクに捨てながら、あっ、このお湯汚れているのではないのだから使ってコーヒーをいれてもよかったのではと後悔し、後悔が遠心力となって同じく蒸すのに使ったぬれ布巾をとっさに顔にかぶせた。

ずれ落ちないように上を向く。

顔の肉が蒸気で温まっていくのを余さず感じ取った。

息子に「どうした」と言われ、肉まん蒸したタオルの熱がもったいないから、顔も蒸していると素直に答える。

顔はちょっとべたべたした気がする。

今日は朝から娘の作文教室があり、肉まんを食べてすぐ隣町の公民館まで歩いて付いていった。

作文教室は近所のおじいさんが子どもを集めてやっているが、たまに先生がどこからかさまざまな分野の達人を呼び特別講座が開かれる。

年始からは書道の師範が来て子どもたちに教えてくれていて、今日もその日。師範にご挨拶すると、お年賀に差し上げたお茶のお礼にとお菓子をくださった。やった~~!

師範はお茶をとても気に入ってくれ、自分でも買いたいのだけど通販か何かあるでしょうかとおっしゃる。うおお……プレゼントに対する一番うれしいリアクションこれだ……。今度カタログを持ってきますとお伝えした。

終えて娘と帰宅。晴れた日で気持ちよくぼちぼち歩いた。師範からのお菓子が何かがまんできずに見ると、鎌倉紅谷の「クルミっ子」だった。めちゃめちゃ美味しいと噂に聞いていたやつだ。興奮。

帰るともう昼で、息子も誘い3人でコンビニに昼を頼る。

緑道を3人横に並んで歩いた。緑道は幅の広い部分と狭い部分があって、狭い部分にさしかかると3人が幅でぐっと寄って笑う。

娘はパンとスープを、私はご飯は家にあるのでカレーのルーだけ、それから息子は「俺はこれ、いってみる」とペヤングの地獄辛カレーと書かれたものを選んだ。カップ焼きそばにしては少しサイズが小さい。「それくらい辛くて食べられないってことなのかな」と息子は言うが、いやまさか。

帰ってみんなで食べた。カップ焼きそばを一口もらって驚く。

ええっ! こんなに辛い!?

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ほんの一口だが口に含む前にまずむせた。食べれば唇も口内もカンカンに痛辛い。私も辛いものは好きでよく買うけれど、これほどのものは初めてかもしれない。テレビでタレントさんが辛いものを食べて辛がる様子をよく見るが、なるほどこういう辛い物を食べているのか。

息子に、これはやばい、本気の辛党のためのガチ商品だから無理せず残してもまったく問題ないと伝えるが、闘争心をかきたてられたのか、なんと時間をかけ食べ切っていた。

息子はしばらくぼーっとして、やばい、まだ胃が辛いなどと訴え笑いながら今度は急に「あっ! 寒い!」と言い出すなど後々まで辛さエンタメを楽しんでいる。

私にはかなり無理なほど辛かったわけだが、息子にとってはそれほどでもなかった、エンタメになるくらいの辛さだったんだろうか。

無茶をすることに誉を感じしかも楽しさにもつながっているのだとしたら、今後足を踏み外し大変なことになる可能性もあるな!? などと不安に思ってしまった。息子が楽しそうなのでその思いは胸にしまった。

落ち着いたころみんなでいただいたクルミっ子を食べてうまいうまいと言い合う。

夕方になりバレエに行った娘を迎えがてら売れた本の発送や買い物など済ませた。時間になってバレエ教室の前で待ち構えるがなかなか娘が出てこず、しばらく待っていると娘が後ろからやってきた。

出入り口をずっと見ていたつもりだったのだけど、見逃して、娘も私を見つけられず駅まで行ったんだそうだ。

本当にずっと見ていたつもりだったのだ。それが機能していなかったことに大いに自信を失った。

夜は料理屋のテイクアウトを買って食べて店の味に驚く。家の味と全然違うな……。いや、プロの味がそういうものとは分かっているはずなのだけれど、しばらく外食をしていないこともあり「店の飯はうまい」という感覚がもはやおぼろげになっていた。

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