まばたきをする体

みんな本当に人だ

25年前、母方の祖母の葬式で伯父の読んだ弔辞は最高で、あれは良いとむらいだと親族でも評判だった。

「母はよく言っていました。『ヒデオ、商売だよ、商売ほどおもしろいものはこの世にはないよ』それくらい仕事を、商いを愛した人でした」

祖母は祖父とともに魚の卸業を営んでいた。働き者でお金の好きな人だった。

おう! おうおう! 目をぎらぎらさせて起きだして、洗濯機をかけて、今日は文学フリマに同人誌を売りに行くんだ。

同人誌を作るのは、儲けというよりも買ってくださる方とのコミュニケーションがうれしくてやっているのだけど、それでもやっぱり物を売りお金を得る場に出ることには興奮する。おばあちゃん! という気持ちになる。

本は先に会場へ送ってある。残りの荷物、設営の備品などをスーツケースに入れてがらがら引いて平和島東京流通センターへ向かった。

入場の際に検温や消毒、COCOAのインストールの確認があり、去年の同時期に出店した際とはレイアウトにだいぶ余裕をもたせてあった。

今回は仕事で作った本も売るためにデイリーポータルZと隣接で申し込んだ。同僚と準備をして開場時間ぴったりに設営が完了、感染状況が厳しい状況だが、お客さんは混み合わずちょうど途切れないくらいで続々と来てくれた。

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「いつも読んでます」と言ってもらえるといちいち「そうなんですか!」と思う。たまにブログのPVを確認すると少なくない方々が読んでくださっているようだぞとは分かるのだけど、目の前にその人があらわれるのはやはり圧倒的なことで、数として「1」のアクセスの、それが実態になると、だってみんな本当に「人」なのだ。

いろんな人がいる。まさに老若男女だし、同じ年くらいの方々であっても、シンプルな服装の感じの人がいれば、派手なシャツの人もいる。黒髪の人がいたら金髪だったり緑だったり髪色もいろいろだったし、なんなら「ためしてガッテン」と書いたトレーナーを着ている人もいた。すごくないですか、外見のはなしだけじゃなくて、みんなその人でしかない「人」だ。

これからも即売会に出て、できるだけ多くの人に会いたいと貪欲に思う。数字の人のひとりひとりの顔やたたずまいが知りたい。東京でない都市の即売会になんとか行ってみたい。

飛沫に気をつけねばという思いからできるだけ小声で、あまりみだりに発声しないほうがいいのかなと手探りの接客だった。「どうぞご覧ください」とか「よかったらお手にとってください」とか、これまでの即売会で言うことをあまり言わないようにすると勢い無言になり、目の前でお客さんが見本を手にしているあいだ、どうしていいかわからず戸惑ってあちこちながめたり、在庫を確認してみたりしてごまかした。

となりで売り子をする同僚は寡黙なことで知られる人で、そんなときもじっと前を向いて無言で静かに座っているので感心した。スマホをみたりきょろきょろもしない。

無事に終わって静かに帰宅。行きも帰りもモノレールに乗れてうれしかった。

それぞれの用事で出ていた子どもたちも帰ってきていて、ご飯を作る時間もないし疲れたからスーパーで総菜を買おうと誘ってみんなで出かけた。

途中神社でおまいりする。最近しまい込んであった5円玉がたくさん見つかって、玄関にまとめておいて好きな時におまいりできるようにしている。うちは信心深い家ではないのだけど、調子よくそういうことをたまにする。

娘は「靴ひもが今後一生ほどけませんように」ってお願いしたいよ! と言って、直後もう靴紐をゆるませてむすびなおしていた。

スーパーで値下げシールのついた総菜を集中的に買う。たくさん買ったらエコバッグからあふれ、息子と娘に2パックずつむきだしの総菜を持ってもらった。

娘は上着につつみ、息子は服の中に隠して歩いて、恥ずかしいんだそうだ。

帰って食べておいしかった。イベントは終わったけど、明日はまた明日でやることがあって続く。

 

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