歯を磨きながらでかいクモを見つけた。天井と壁の垂直のところに斜めにいる。
この家にはクモを苦手にしている者がいないため、基本的にクモは飼うことにしている。おそらく同じ固体ではと願っている黒い小さいのが1匹いて、そうじゃないのもたまに見かける。
しかし、いま目があったのは……これはいつもよりずいぶん大きいな……。3センチくらいか、迫力が全然違う。
息子を呼んだ。「でかいくもがいるんだけど」「オッ!」「どう」「これは……いやだな……」
うん、なんとなく私も、ここまでのサイズになるとちょっと同居は難しいんじゃないかという気がした。
「でもとりあえず……手が届かないからこのままにしておこうか……」「うん……」
静かに朝ごはんを食べた。ピーナツバターが切れてあんこを買ってきた。涼しくなって調理に火を使うのに抵抗がなくなってきて、あんこは自力で炊いてもいいころかもなと思った。
子どもらは学校に行き、私は在宅で仕事。家が寒くてマフラーをした。急に寒くてさみしいほどだ。盛り上がろう! と思って昼は辛いカップ麺を買って食べた。
そのうち子どもらが帰宅、今日は二人とも学校の授業が早く終わる日らしい。
台所のシンクに辛い麺のカップが置かれているのに気づいた息子に「この中に辛い麺を食べた者がいるな」とばれた。
息子は宿題にかかるが、娘はひまそうだ。「なにもやることがない」というので図書館で本を借りてきたらというのだが「そういうことじゃない」とのこと。
しばらくぼうっとしていたが、「大阪城を描く」といって描いて「おかあさんにあげる」といってくれた。やったぜ!
今日の図工のテーマが城を描くというものだったらしく、練習したそうだ。
夜はおでんを食べた。実はまだおでんのことがまだよくわかっていない。いろいろなすり身が入っているが、すりみに対して、どれもどうも概ね同じような味だと感じてしまう。
私は好きな食べ物を後に残して楽しみに食べる一派で、おでんに関しては子どものころからいつも一番最後にゆで卵をとっておく。そして最後に満を持して食べて「(他のネタに対して)うまいわけでもないな」と毎度思うくせもある。
息子は最後に大根を残して少しずつ食べていた。息子は小さなころ火を通した大根が苦手でよく残した。それで娘に「お兄ちゃん、大根食べられないんじゃないの」と冷やかされて発奮して食べていた。
炊飯器に少し残っていた、醤油で炊いた茶飯をカッとなってお替りして食べてしまい反省する。
「あまいはうまい、寒いは眠い」といい、息子がずっと眠そうだ。早めに風呂を支度し、入ればと声をかけるとすなおに従っていた。
「やい」そうして脱衣所に入っていった息子が言う。「どうした」「あのクモがいる」
朝のクモが洗い場へ移動していた。「おお~~」「やっぱり大きいね」「どうすんの」「どうすんだろう……」
しばらく、お母さんがいやきみがと譲り合うも息子が動かないのでやむなく近くまでいって厚紙でそっとすくった。
どうなるかと思ったがクモはまるでおとなしくすくわれた。
よし! と思うが、風呂場は窓がなく外に出せない。ここから一番近いのは玄関しかない。
「玄関! 開けて!」息子と二人ぶつかり合いながら玄関に走り、開けてもらった隙間から紙ごと外にすべらせた。
クモは紙から降りて這って去った。
息子は心穏やかに風呂に入って寝て行った。
娘に「鬼滅の刃」の22巻を借りて読んで寝た。
大阪のシカクさん、下北沢の日記屋 月日さん、赤坂の双子のライオン堂さんでも既刊を取り扱っていただいております~。
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