まばたきをする体

殺人を犯し森に逃げ込んだ男が野生化していく

起きたら9時すぎていた。休みの日でも私と息子はだいたい8時台には起きるから、1時間よけいに寝る程度には夏の暑さにやられているんだろうと思った。

私が起きるとつられて息子も起きた。年中寝坊の娘をおいて、ふたり朝ごはんを食べた。

一時期熱心に息子のプレイする「ゼルダの伝説」を応援していたが、最近息子はニンテンドースイッチの小さな画面でばかり遊んでテレビ画面に映してくれなくなってしまった。

久しぶりに「テレビに映してよう」とせがんで画面をみせてもらった。息子はこのゲームをいちどクリアしていて、でもまだ遊んでいる。どう遊んでいるのか聞くと「あたりをぶらぶらしている」のだそうだ。明確な目的がなくとも楽しいんだからゼルダの伝説、本当にすごいな。

洗いあがった洗濯を干しながら、ぶらぶらする息子を応援するうちに娘も起きてきた。息子がゲームをしながら「小説の筋を思いついた」というので、私と娘で聞いた。

殺人を犯し森に逃げ込んだ男が野生化していく話だった。

いいじゃんいいじゃん! と私と娘で盛り上げた。

それから、ゲームをやめて学校の宿題にとりかかった息子が淹れたコーヒーに娘がぬいぐるみをぶつけてコーヒーがそこらじゅうにぶちまかれた。

あまりにも急すぎてびっくりした。

小説の筋でいいじゃんいいじゃんともりあがって→息子がそろそろ宿題やるかとゲームをやめ→コーヒーをいれた

私は居間のちゃぶ台でノートパソコンに向かってネットの記事を読むのに集中していたが、息子がコーヒーをいれている様子は視界に入っていた。

息子はコーヒーを持ってきて私の向かいに座って、いや、座ろうとして? コーヒーをちゃぶ台に置いた。そこに娘が赤ん坊くらいの大きさのある、家族みんなでかわいがっているあらいぐまラスカルのぬいぐるみを投げつけた。

コーヒーがぶちまかれてワー! となった。「なんで!?」「いま何がおこった!?」「ご、ごめん!」などとひととおり3人で大騒ぎしてから、「拭こう!」となって全員があちこちから布や紙を持ってきた。

「砂糖は!? 入ってるの!?」「それが入ってるんだよ~~!」

飲料は床にこぼしたときに急激に、糖分が入っているか否かが重要になってくる。

糖分が入っているとべたべたするからだ。

「入ってんのかよ~~!」「蟻が来るよ~~」

みんなで拭いて、浸ったざぶとんのカバーを外すなどした。

娘はどうも、兄とじゃれていて冗談を言った兄にぬいぐるみを投げつけたらしい。兄ではなく、ちゃぶ台のコーヒーカップにちょうど当たってしまった。ふしぎと、ぬいぐるみはまったく無事だった。

一体何事が起ったのかわからなかったのは、おそらく、ぬいぐるみの軌道が全然良く分からない動きをしたからだったように思う。

もうぬいぐるみを投げるのはやめようと娘と約束して、静かな時間が戻った。

娘は「こばやしよしひさだったら、このことをどう俳句にするだろう」と言った。

しばらく誰も何も言わなかったが、息子がはっとして「それは小林一茶のことかな」と言い、どうも娘はこれまで小林一茶のことを“こばやしよしひさ”だと思っていたようだ。

昼は同人誌の発送で行ったコンビニでついでにロールパンを買って来て、あれこれの残りものと一緒に食べた。

完全に休みの日で、午後は娘がドラマの「ゆるキャン△」を延々見たおすのを横から見たり、昼寝をしたり、本を読んだりする。

こうしてだらだらすごすとき、いつも体の奥底から だるみ のようなものが漏れ出す感覚がある。

貯蔵された日頃の疲れがたまったものなのか、だらだらすることによりいま製造されたものなのか、分からない。

出てきた だるみ はチャキと動くことにより漏れを止めることができる。すっと立ち上がり皿を洗ったら止まったので、買い物に行って、夜は冷しゃぶとネットで見たゴーヤのマヨネーズ炒めを作った。

娘と「逃走中」を観てから寝た。

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