まばたきをする体

子猫1匹分くらいの毛

朝は虫を見うしなった。

息子が居間で見つけた1ミリくらいの小さな虫で、外に出してやろうと話をし息子が虫の行く手にティッシュを置いてのぼらせようとするのだがもぐってしまい、それではこれをと重みのあるボール紙を置いたらのぼった。

紙を持ち上げたところ虫はおろおろスピードを上げて動きまわり、急いでベランダに出そうとサッシを開けたところで紙を落としてしまった。

なんとなく外に逃げたような、いや屋内に落としてしまったような、よくわからない。

まあいいか……と私が言うと、息子は「なんかまだ部屋にいる気がするなあ」言った。

息子と娘の髪の毛がいよいよ伸び盛りとなり切りにやらねばならない。なじみの1000円カットのお店に朝ごはんの済んだ息子から行かせた。

駅前にあって、機械に名前を入力して整理番号を取るシステムの店で、息子が「あの機械って本名入れるのでいいのかな。“ピヨ彦”とかウソの名前を入れないでいいんだろうか」というので「みんな本名入れてない? ひらがなで名字だけ入れる人が多い気がするけど」と返すと「このあいだ”まめ太”って入れてる人をを見たんだよね」とのこと。

なるほど、まめ太がいたらピヨ彦がいてもよさそうだ。でもまめ太さんは本名かもな。

おとなしく本名を入れると言って出て行った息子だがすぐに「休みだった……」と帰ってきた。ありゃ、日曜日なのに。ネットで調べると都合で休業しますとあった。

しかし今日切らねばまた次の週末までチャンスがない。それで通りがかりに見つけた最近できた店に行ってみることにした。

母子3人そろって行くとすいていた。値段の安いお店なのにインテリアがおしゃれで、かかっている音楽も今ふうだ。「いつものところがよかったのに」と文句を言っていた娘も黙って、あ、これは承知したなと察した。

ふたり神妙にカットしてもらった。仕上がりも上手で、もしかしたら次からはここに通うのがいいかもしれない。

毛量の多いロングヘアの娘は8センチほど切ってもらい「子猫1匹分くらいの毛が床に落ちてたよ」と満足気だった。「2匹分はあったかもしれないな」

買い物をして帰ると娘が改めて「あの切った毛ってどうなるのかな」という。「美容師さんが掃除して捨てるんでしょう」「……ふうん」

しばらくして、もしかして子猫がかわいそうになったのか!? いやまさかと思って聞くと「いや、あの店、ゴミ箱なかったから」と言って、おお、そうか。確かに美容院は知らないあいだに切った髪の毛がどこかへ行く。ゴミ箱が見える店はあまりない。

午後は朝見失った虫が出てきたので今度こそ外に出した。

そして娘と体操着を買いに隣町のスーパーに行ったのに財布を忘れた。

しょんぼりして帰宅すると娘が「最近名言を思いついて学校でよく言ってるんだけど『悲しいことがあったら夢だと思えばいい』って良くない?」と言って、なるほどそれはいいな。

しかし体操着を買えなかったことは夢と思わず覚えておかねば。

夜は雪見大福のファミリーパックのを食べた(一つが小さい)。食事を終えた順に私がまず食べた。それから息子が食べようとして「雪見大福ってひとり何個? 2個?」と聞くので、え! 2つ目食べていいかな! と私は盛り上がったが、娘がキッとして「1個でしょ!」ととがめて息子は「ですよね……」と従っていた。

 

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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