まばたきをする体

金を出し自信を買う

体育の授業で柔軟体操をやったがぜんぜん体がかたくて驚いたと息子が言って、そういえばわたしも開脚とか前屈とかしばらくやっていないなと思ってやってみるが体が痛くて動かない。おお……。こんななのか今の私は……。

息子が「衰えの気づき」と言った。人が普通に生きているところにキャプションをつけないでもらいたいものだな。

土曜だが子どもたちは午前中学校がありそれぞれにでかけていく。誰もおらず仕事もない、ぬいぐるみを抱いて横になったら寝ていた。

ふぁと起きだして洗濯や掃除をして、昼はホットケーキを焼きたいが卵がないのでついでにあれこれと買いに出た。

スーパーのレジは少し並んでいて、列につくとすでに会計が終わったらしいおばあさんがレジの店員さんに「ねえ、すみません」と声をかけている。「はい、どうされましたか」「忘れ物があるよ」

買い物をエコバッグにつめかえる台を指さすが、そこには何もない。店員さんは慣れたように優しく「大丈夫ですよ、なにもありませんよ」と答えている。「そうかな、忘れ物がありますよ」「ないから、大丈夫ですよ」

列のみんなで少し見守る感じがあった。おばあさんは帰って行った。

子どもたちが買えり、ホットケーキだ。

昨日新しいフライパンが届いた私の家はいまやホットケーキに対し大変な自信がある。きれいにきれいにきれいに焼けた。道具の重要さは分かっているつもりだったが惰性で忘れがちなもので、こうして新しいのを買うと簡単に自信がついて本当に笑っちゃうな。はっはっは。

お金を出してでも欲しいものそれが自信、などとはいうが金を出したら本当に買えるパターンもあるのだな、自信。

今日はバターも早いうちに冷蔵庫から出して柔らかくしておいた。トッピング用のバニラアイスも買ってある。

娘が「バターを塗っちゃったからアイスを乗せるところがなくなっちゃったな」というので「どっちも乗せたら?」というと「そんなことしていいの!」と驚いていた。

私が贅沢に対してきびしい目を持っているので娘も許可なしに贅沢ができない体になってしまっているのかもしれない……。

午後は娘のバレエの稽古を送り、ついでに本屋とカルディとあと同人誌の発送で宅配ボックスを回った。本屋には欲しい本がなく、ロシアの最近の作家の短編集というのに興味を持ったがちょっとまてだったら戯曲を、チェーホフとかゴーゴリみたいなやつを再読せねばと思って買えなかった。

ネットとリアルで、買い物の仕方がぜんぜん違って、これは本当に、本当にどういうことなんだろう。

カルディは入店制限がされていて、店の前にしばらく並んでから入った。中はかつてなく空いていており大変に快適だ。カルディはいつも混んでいるから、こんなカルディが体験できるなんてうれしい。

並んだからにはなにか買わないとと思っていたけど、それに加えて空いていたからあれこれ見やすくて初めてのタレとか素とかを買った。

バレエを終えた娘に傘とイボコロリをねだられ傘屋と薬局に寄る。買ってやった。

夜、娘はトゥシューズを1分以内に両足履く練習をしている。先日、山から降りてきて数日東京で過ごした父親に買ってもらっていた。サテンの布がきつく張ってあって、片足にもう片足がきれいにコンパクトにおさまる。これがすごい、本当に宝物みたいなのだ。クラシックバレエを長く人がもてはやす理由が本当によくわかる。

そんな宝物のような神々しさのトゥシューズの内底に娘はマジックで「右」「左」と書いた。見間違わずに素早く履くためだそうだ。娘は稽古事としてバレエに取り組んでいる当事者なのだなと思った。部外者の私にとっては神々しい宝物に見えるが、娘にとっては道具なのだ。

それから晩は餃子を焼いた。なぜならうちのフライパンはつるつるだから。当然うまく焼けた。

テレビに石原さとみさんが映り「なんと美しい」とつい声が出て、餃子を食べる子どもたちがその声につらられてテレビの画面を見たところで画面は山中伸弥教授が映った。中年の男性ををかわいいという文化あるよな……と思って照れて釈明した。

 

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