まばたきをする体

私たちのさきほどと完全に一致

ゆっくり寝てよぼと起きだし、雨だけど洗濯機を回して干して除湿器をかけた。朝ごはんを食べて、昨日から家にきている子らの父に子どもを託し出かける。

新宿で暮らしはじめた友人の家に遊びに行った。引っ越して以来お伺いすると言いながらずっと延期になっていたが、お互い日々体調を観察したすえ思い切った。

なにもかもおしゃれな人なので、よほどきれいに暮らしていることは予想していたが、部屋に入るとバルミューダ電気ケトルがあって思いつく気が一切しない しゃれ気におそれいる。

住まいに気遣う人の家のバルミューダはもはやトースターではなく電気ケトルなのだ。

うちには電気ケトルはないが、もし買うとしたらまずティファールと考えたすえ、ヤマダ電機に行ってその時一番安い聞いたことのないメーカーのやつを買うと思う。

バルミューダのケトルで入れたコーヒーを飲ませてもらった。それからあれこれおしゃべりもして、遅い昼は新大久保の韓国料理屋に食べに行くことにした。

ソーシャルディスタンシブルな店があるそうで、入るとなるほど消毒に換気に人の間隔を開けるのに気合十分の店だ。

私は韓国料理店に行くならぜひスンドゥブチゲを頼もうと心に決めていたが、友人はせっかく私が一緒だから一人じゃ食べない何がなんだか分からないものをと意気込んでメニューから選び「チョングッチャンをお願いします」と言ってから「チョングッチャンって何ですか?」と店員さんに聞いていた。

店員さんは「チョングッチャンは、知らないならやめておいたほうがいい」と言う。食べ慣れてないと難しい料理なのだそうだ。

あとで調べると、大豆を発酵させた味噌で粘り気があり独特の匂いがするとあり、確かに異国の人に「納豆ってなんですか? ください」と言われたら「気を付けて!」と言いたくなる。

代わりに友人が頼んだのが「麦ごはん定食」で、「クッパ」とか「ビビンパ」がならぶメニュー表のなかで急にシンプルな日本語で書かれたものだった。

店員さんは「チョングッチャン」のときほどは否定しなかったものの「麦ごはんにしょっぱい味噌のたれのようなものを混ぜて食べるだけのものなんですが、大丈夫ですか?」と念を押していた。大丈夫です、と友人は答えた。

じゃんじゃん小鉢が出てきて、韓国料理の楽しいシステムを全うしてくれる店だ。ひとつ食べ切ると、ちゃんと次のが出てきた。うっしっし。

友人の麦ごはん定食は、チョレギサラダのドレッシングがかかっていない状態に麦ごはんを投入し、しょっぱい味噌と豆腐の煮込んだようなものを少しずつ追加して味を調整して混ぜるという食べ物だった。一口取ってもらって食べるとすごく美味しい。

友人は周囲の店員さんがたからしきりに「その味噌はしょっぱいから気を付けて」と声をかけられていて、しばらくすると麦ごはんではなく白米のお椀に盛って「これ追加して味を調整してください」と丼に投入してもらっていた。友人はおいしさと不明度の高さに大満足したようだ。スンドゥブチゲもとてもおいしいスンドゥブチゲだった。

それから韓国の食材を扱うスーパーをひやかすも悩んだあげくふたり何も買えず。友人宅に戻ってテレビをつけたら「孤独のグルメ」の韓国編で、小鉢を食べ切ると次が出てくるくだりがあるなど私たちのさきほどと完全に一致していて、どうでもいい奇跡だ。

帰りにおみやげのカヌレを買おうと新宿の伊勢丹に寄るも行列であきらめる。送りに出てきてくれた友人は、せっかく伊勢丹に来たからめちゃめちゃ高い飲むヨーグルトとか買おうかななどと言っていたが結局なにも買わなかった。

英気がやしなわれ元気に帰った。留守番の父子が待っていて、もしかしたら娘は目が悪くなっているかもしれないという報告があった。

「寿司」の看板を「チーム」と読んでいたそうだ。

眼科に連れて行かねば。

 

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