まばたきをする体

ありがたみの量にたえられない

葉っぱにくるまれた寿司を持って子どもたちの父が山から降りてやってきた。

しばらく移動を自粛し山を出ずにいた(たまにお茶を売るためにふもとの村へは行っていたようだ)が、久しぶりに顔を見せてくれた。

みんなで葉っぱ寿司を食べた。柿の葉寿司のようにブロックに成型してあるのではなくご飯が平べったい。葉にくるまれたというよりも、挟んである感じ。具は甘く煮た貝としいたけとふきと紅しょうがでとてもおいしかった。

2種類あるというが具も様子もだいたい同じで、何が違うのか聞くと、知っているおばあさんが作って持たせてくれたものと知らないおばあがさんが作ったのを買ったものだそうだ。

郷土料理をすっかり堪能し、父は娘と一緒に作文教室へ出かけていった。父は作文教室のおじいさん先生ととても仲が良い。

残って掃除や洗濯をしていると、高山都市の名前が思い出せないのだがと息子がやってきた。高山都市?

様子を口で説明してくれるのだがピンとこず「ああもう! 絵を描く!」といって描いた絵をみたら雑なもののだいたいマチュピチュだった。

マチュピチュって雑に描いても伝わるものなのだな……。

子どもたちはこのあと父に連れられていつもよくしてくれる親戚の家に進学の挨拶に行くことになっている。

マチュピチュが分かった息子はすっきりしてその支度をしていた。

「あの家にいくとさ、到着してまずコーラを出してくれるじゃん?」
「そうだね」
「そのあとごちそうが出てくるじゃん」
「ありがたいよね」
「ごちそうが終わるとメロンかイチゴが出るじゃん」
「すごいよね」
「食事のあとはおばさんが買い物に連れて行ってくれてゲームとかマンガとか買ってくれるじゃん」
「よくお礼を言わないといけないよ」
「それから帰ってくると、なんかおじさんが300円とかくれるじゃん」
「そうそう」
「すごすぎない!? なんなの!?」

まだ行く前からありがたみの量にたえられなくなっていた。幸せ者よ。

昼も葉にはさまれ寿司を食べた。それくらいたくさん持ってきてくれたのだ。

午後、父子と別れて私は実家にピアニカとリコーダーを届けに行った。息子が小学校時代に使っていたものを甥っ子にゆずることになっている。

駅のホームでずれたマスクをなおそうと紐をひっぱったら紐が切れてしまい慌てる。髪の毛で押さえた。

実家で妹にピアニカとリコーダーを渡した。最近どう? みたいな話をして、妹はふだん隣町の中学校で給食を作る仕事をしており、休校中は仕事がなく困ったのではと思ったが案外別の仕事が入るなどしのげたようで良かった。

私も取材がリスケになるとかあったけどおかげさまで仕事はぜんぜんあってありがたいことだよ、というと「リスケってなに?」と聞かれて照れてあわてて説明した。

今の会社に入ってすぐのころ、上司に「1Qが終わったころまた面談しましょう」といわれて「1Qってなんですか?」と聞いたのを思い出した。そのときの上司も今の私のように照れてあわてて説明してくれたのだった。

それから西小山で友人と待ち合わせ、umi neue(ウミノイエと読む。かっこいい!)というお店で行われている乙幡啓子さんの「ウミノイエの妄想民藝店」へ。

乙幡さんによるオリジナルの張り子作品が見られるということで期待十分だったわけだが、思った何倍もすばらしいことであった。

たとえば、通りがかりの宇宙人に拾われて大切に育てられていたライカ犬(宇宙人がライカを抱っこしている)の張り子とか、妄想で民芸するとはこういうことか! という、すべてがそういう作品だ。

真珠の似合う豚の張り子には、似合っていてもひけらかすことはせずにいる、と言ったことが書いてあってとことん作品の性格が良い。

まよったがアマビエがあまりにもかわいかったので心をきめて注文した。

乙幡さんと知り合いの私たちが注文してしまってはファンの方が注文できないのではと友人と話しながらやってきたが、受注生産で量産してくれるのだそうだ! やったー!

友人は盛り上がって文鎮も買っていた(umi neueはギャラリーでありながら古物を扱うお店でもある)。よかったよかったと言いながら帰った。

 

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