まばたきをする体

親父がお父さんに進化したのではない

洗濯を干していると、朝食を食べる娘に「親父はいつお父さんになったの?」と聞かれた。

かつて「親父」という言葉があったようだがそれはいつから「お父さん」という言葉にさし変わったのか、とたずねたいらしい。

親父がお父さんに進化したのではなく、それらは同じものを指す言葉としていまも両者存在し、どちらの言葉が早く発生したかはちょっと分からないというような旨の説明をした。

確かにお父さんのことを親父という人は今もいるねか……と言いながら娘は学校へ。

見送る後姿、膝の裏のばんそうこうが取れかけているのに気づいて取りかえて送り出した。

かき壊した傷で、ばんそうこうで覆ってはいるが飛び火にならないか心配だ。娘は手が落ち着かずあっちこっちひっかいてすぐ傷にするので飛び火になりやすい。

息子と私は在宅仕事の日。それぞれに作業をして昼は炊いたご飯に常温の缶詰のタイカレーをかけてうまいうまいと食べた。

缶詰のタイカレーをまとめ買いして、最初のうちはちゃんとあたためていたが最近は面倒でご飯の熱さでカレーを温めるようになった。

こうしてカレーを温めないでいると、死んだ祖母がかつて2日目のカレーに火入れをせずにご飯にかけようとしてみんなで止めたのを思い出す。私もあの祖母のようになっていくのだろうな。祖母も大変にせっかちな人だった。

午後もヤーヤーと仕事。息子は早々に「今日の勉強はすべて終わった」と言って横になってマンガを読んでいる。信用ならないが来週からは終日学校があるようだしもう私があれこれ言わずともよかろうと放った。

そのうち白い紙に絵を描き始め、横断歩道を渡る男にライオンがとびかかろうとする絵とだった。良く書けたので冷蔵庫にはった。

それから息子に晩の炊飯のセットを頼むと、米袋の米に透明の計量カップをズッと押し込み「こうして見ると、このあたりの地層はまるわかりだ」と観察している。

夜に楽しみな配信の出演がありそわそわ落ち着かず、夜はトンカツを買ってきてすませることにした。

外出自粛期間がはじまってからずいぶんあれこれ配信イベントに出させてもらったが、始まる前のどきどきした時間を自宅で過ごすのがおもしろい。

リハーサルの舞台上とか楽屋で緊張するのではなく、風呂を洗って晩ご飯を作って食べながら家族とニュース番組をみて自分の箸と自分の茶碗を使いながら緊張する。どう考えても落ち着く場所だと思い込んでいた家が状況によってはこんなにも落ち着かないものかと知った。

もうしばらく出演まで時間があるなというところで娘から明日学校に提出する算数ドリルの丸付けを頼まれる。

間違えた部分がかなりありやりなおしたら? と渡すと10分もせず全問正答に直して持ってきた。計算の跡もなく少し悩むも「もしや、答えを写したのかのう……?」と聞くとうなずいていた。

白い紙に間違えた問題を書き写して、明日早く起きてやろうと約束する。3~4桁の掛け算で、どう教えたらいいかと思うと難しすぎて暗くなったが、配信の時間がきて楽しすぎてすっかり元気になった。

 

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