まばたきをする体

決めてもらえると本当に楽でありがたい

子どもたちがふたりとも学校へ行き午後まで帰ってこない。いちにち通してふたりが不在になるのはいつぶりか。

ひとりの家でこっそりお菓子を食べた。実際は堂々と食べたが、久しぶりで慣れず心がこっそりしていた。

思った以上の解放感にちょっとぎょっとすらする。子どもたちのことは好き好き大好き超愛してるの極みだが、安全に不在であることにこうもほっとするものか。

仕事に集中した。長い間一人でいられる保証があるので焦りがなくはかどった。昼にまたお菓子を食べた。ちょっと食べたらもっともっとでたくさん食べてしまい結局昼ご飯はお菓子だけで済ませてやった。一人でむさぼる雑な昼飯よ本当にごぶさたしていました、私はここ数カ月子どもたちと3人麺類ばかり食べていたのです。

午後になり娘が帰ってきて息子も帰ってきて勢ぞろいし、こうして朝出て行って、同じメンバーが夜また帰ってくる、その当たり前のことが家というもののだいご味なのだったと思い出した。だれもどっかへ行っちゃわない。緯度経度、ずれずにばっちりここに帰ってくる。

晩はアジが食べたいがアジフライと刺身とどちらがいいかと息子に聞くと刺身との答えで、決めてもらえると本当に楽なことでありがたく、よしきた刺身ですねと買いに行く。しかしアジの刺身は売り切れでカツオを買った。

カツオのたたきを買ったといいながら帰宅、息子はアジの刺身を指名したことを忘れていたようで「やった」とのリアクションでよかった。食べておいしかった。

食後、娘に「君の膵臓を食べたい」って本がすごく面白いらしいんだ、図書室に予約したんだけどお母さん知ってる? と聞かれて、……おお……この日がきたか……。

「君の膵臓を食べたい」という作品があるらしいことはうっすらと知っており、その一体何があったのかというタイトルに度肝を抜かれたものの、抜かれた度肝はそのままに作品とは何の接触もせずにここまで生きてきた。おそらくこのまま私は作品の詳細を知ることなく死んでいくのだろうと、そう思っていたのだが、牙城が娘の部分から崩れるとは。

「タイトルだけ知ってる、でもよく知らないんだよね」と答えておいた。娘は、もう一度、すごく面白いらしい。といっていた。娘が読んだらいよいよ私も内容を知知らされることになるだろう。

それからみんなでネットフリックスで「クィア・アイ」やアニメの「日常」を観た。息子がポップコーンを作った。

作りながらぼそっと「イージスアショア」と言ってハッとしていた。つい口から出てしまったという風だった。

「つい言ったね?」「つい言ってしまった……」「気持ちは分かる」「アショアの部分を特に言いたい」

ただ、ニュースについてきちんと理解できていないので言ってからちょっとひるんだということだった。

娘にぬいぐるみを渡されて「しゃべらせて」というので引き受ける。娘はぬいぐるみの方を見て「ねえ、何歳?」と聞いた。分からないので適当に私の年齢で応えるべく「41歳だよ」と答えようとしたら娘に「41歳だよ」の「よんじゅ」くらいの時点でかぶせるように「5歳」と訂正された。

もういちど強く「5歳」と言っていた。

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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