まばたきをする体

丼に盛らないと〇〇丼にならないよ

ジップロックのコンテナを息子の弁当箱としている。

サイズ的にちょうどいいし漏れないし軽い。それに、圧倒的に「やってる感」が薄い。雑に生きている感じがしてかっこよかろう。

弁当包みも巾着や布は使わずジップロックのバッグに保冷剤と箸と一緒に入れて用意した。

「無機質だな」と息子が言うので、こういう気をつかわない感じがすかしてていいんじゃないかと持論を述べたところ「気の利かせ方が意外……」と持って出かけていった。

娘も学校へ行き、二人の子どもがいっぺんに長時間完全に不在になるのはかなり久しぶりのことなのではないか。椅子にすわり体の動きを完全に止めた。誰の声もせず気配もない。

仕事を始めてしまうと概ねいつも通りだった。そのうち娘が帰宅し、昼は冷やしうどんにした。

山に暮らす子らの父が送ってくれた細くて小さい、ラディッシュに近い品種だという大根は固体の関係か筋が多く、スライスしてうどんに乗せるも娘が嫌わないか心配だ。

とくべつ何も言わずに見ていると、ごまだれをかけてうまいうまいと食べていて安心した。ご飯を作る仕事は実作業が大変だけど、作ったあとに人が喜んで食べてくれるかどうかの心配するのもまた仕事のうちという気がする。

いつか友人が、料理の上手い人というのは料理が上手いことを自覚し自信がある人のことだといっていた。どう? おいしいでしょう! という態度を明るく取れることが、料理上手の条件のうちだと、作ったものを保証する気概まで込みでの料理上手だ。

私はそこの自信がなくいつも不安でおる。

午後も仕事をしながら、娘が塾に行くのを顔と声だけで見送り、息子が帰ってきてまた顔と声だけで向かえた。クラスのみんなはちゃんとした弁当箱を使っていたということだった。ジップロックのコンテナは平たいからかばんに入りにくいのが弁当箱として実は難点で、クラスメイトの方々はさてはそこに気づいたか。息子は、でも特に不満はないようだった。

娘が夜は〇〇丼が食べたいといい、〇〇は何でもいいそうだ。豚の生姜焼きにしようと思っていたので肉を細かく切って豚の生姜焼き丼にした。私は下ごしらえだけして、娘に焼いてもらった。

キャベツがたくさんあるので千切りにして、平たいお皿に生姜焼きとご飯と一緒に盛りこもうとしたが、娘はそれでは〇〇丼にならないよと言った。かなしそうな顔をしていた。あわてて丼に盛りつけてキャベツは別の皿に盛った。

食後は娘がYouTubeすゑひろがりずのゲーム実況を観るのと息子が配信で映画の「コラテラル」を観るちょうど間くらいの場所に座ってどっちもちらちら観た。

観終えた人々が寝ていくのを見計らい、私はそっとチョコレートを戸棚から出す。

漠然とスーパーでなにかわくわくしたものを買いたいとずっと思っていて、しかしそれは甘いものなのかしょっぱいものなのかよくわからないでいたが、今日それはもしかしてチョコレートなんじゃないかと思った。

チョコレートは味が濃すぎて普段畏れて買わずにいるがうやうやしく買ってきた。

わくわくを堪能して盛り上がって寝た。

 

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