まばたきをする体

感激して「優しい!」と冷やかす

子宮頸がんの検査でひっかかりまくって中病院からついに大病院を紹介されやってきた。

娘の骨折でもお世話になった病院で勝手はよく分かっていて気安い。産婦人科は別の科に比べて朝からずっと混んでいて、どうも診療枠が他の科よりも早い時間から設定されているらしかった。

いくつかあるうちの誰もいない診察室の戸が開いていて待合室から中が見え、なんらかの機械のモニタに「Hey there!」と映っている。

問診で担当の先生に(組織診という検査をしたときの)標本はお持ちでないですかと聞かれ「やはり…!」とはっとする。中病院で紹介状を書いていただくとき先生と看護師さんが(標本は……)(検査しなおすだろうから……)(じゃあいいか……)みたいな会話をしているのを小耳にはさんだのだ。素人ながら(いや、あった方がいいんじゃないすかね)と思っていたのだよ。先生! 中病院の先生! やっぱ標本あったほうがいいってこっちの先生おっしゃってます!

「無いんっす」というと、あらためて検査はせずに紹介元から取り寄せておきますね、とのことで、おお、エコだ。費用もかからず助かる。

これまでの病院でやっていなかった超音波の検査だけしていただくことになり、いつものように内診台に寝ておねげえしますと下半身をカーテンの向こうに出した。

産婦人科の内診は独特だ。何度やっても変わったことなのでしびれる。カーテンで仕切れられた見えない向こうで診察してもらう。

しばらくガチャガチャ音がして感触もあった。先生から「超音波で見たところ困ったところはないですね」とのことでほっとした。

降りた内診台の紙のカバーに血をつけてしまい、カーテン越しに看護師さんに謝ると「そういう場所だからいいんですよ!」とフォローしてくれた。

「私も患者さんだったら申し訳なく思うとこだけど、こっち側にいると全然大丈夫なもんなんですよ」

感激してつい「優しい~!」と冷やかしたら、カーテンから顔を出して「おだいじに」と言ってくれた。

会計で診察の整理番号を出して、すると会計の番号が出てきて受け取ってモニタに番号が現れたところで会計機で支払をして、段取良く病院を出た。

サンドイッチを買って帰る。子どもたちも学校から帰ってきて、みんなで食べた。ソーセージを茹でてつけたら息子はサンドイッチに無理に挟み込んでいた。

うちの近所にはファストフードの店がないねという話になり、そこからミスタードーナツがあったらなと娘が言った。

それでむかし息子がまだ2歳くらいのころふたりでドーナツ屋に行ったときのことを思い出した。私がカウンターに「ひとつください」と注文すると抱いていた息子が「ふたつにしてください」と言うのだ。

私は息子にひとつ買うつもりだったが、息子はひとつを私と半分つにすると思ったらしく、そうじゃなくてふたつ買って、一人ひとつ食べたいと考えたらしい。

お母さんは食べないから、ひとつで大丈夫なんだよというと息子はフーフー興奮していた。ひとつ渡すととても喜んだ。

息子は覚えておらず「アイス屋で歌われたのは覚えてるんだけど」といっていた。コールドストーンだ。そっちは私は忘れてたなあ。そうそう、歌われた歌われた。

午後はまたそれぞれ仕事をした。アイスコーヒーに雑に余ったレモンの炭酸水を入れて飲んだら酒の味がした。

晩の買い物をする間に娘にみそ汁を作っておいてもらい、息子に洗濯物をたたんでもらう。あれこれ手伝ってもらっても忙しさが不思議と変わらない気がする。

娘に「ねえ」と背後から呼び止められ、なに? と振り返ると「パン屋に行くとトングをかちかちしたくなるよね?」とぎっと目を見て言われた。

最近娘はいわゆるあるあるを言いたい状態になっている。

娘は目ぢからが強いほうなので、そう問い詰められると私はもう「うん、あるね」と認めるほかない。

 

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