まばたきをする体

なぜ私は自分が包丁を使うのが不安でないのか

のんびりしている猫にねずみがよりかかって寝ていて猫の頭の上にも別のねずみがよじのぼっている、かわいいシールを友達にもらったんだよと娘がみせてくれた。

ビニール素材でぷくっとさせてあって、ハート形の石がうめてあり、娘にかいでみて、といわれるのでかいだら甘いにおいもついていた。子供向けのファンシーグッズの遠慮なきファンシーの詰め込み、需要にこたえた結果を力強くあらわしていて良い。

しかしこの猫はねずみを食べちゃわないのかなとつい私は言った。「仲良しだから大丈夫なんだよ」と娘に言わせてしまい反省した。

子どもたちは作文教室に行き、私は仕事。

あちこち歩きまわる取材でちゃんとできるか緊張していたがほがらかで気の良いひとたちにかこまれ天気も良く万事うまく行った。

終えて帰る頃、息子からメッセージがきた。「腹へった~~」「いまどこ」

おおっ? 時間は通常通りで、いつもこのまま普通に帰って普通にご飯のしたくをすれば間に合っていたのだが、そうか腹が。

最近息子はどうにもお腹がすくようだ。成長期に由来した食欲の時期がやってきたらしい。

歩き回って疲れていたので、息子もそういうしやむを得ずという体で「スーパーにお弁当買いに行っていいよ」「妹もつれて2人でいきな」と返事をしたのだった。

はじめての「晩ごはん、適当に弁当を買いに行かせる」を発動した。

ドキドキする。

はっとして「私のお弁当もなんでもいいから買って来て!」と送るが既読にならず、しばらくして「もう俺たちの分だけ買ってきてしまいました……」と返事があった。早い。

帰ると子どもたちはすでにお弁当を食べ終わったあとだった。私は適当に買ったお惣菜に冷凍ご飯をあたためて、あと納豆とインスタントの味噌汁を食べた。

子どもたちもお弁当じゃなくこれくらいできるといいんだろうな。教えればいいんだな。

あとは、焼きそばとカレーも教えたほうがいいだろう。しかしそうか、どちらも包丁を使うのがマストになるんだよな……。不安だな……。

と思ってはっとした、ではなぜ私は自分が包丁を使うのが不安でないのか。同じ刃物ではないか。

もちろん経験値がまったく違う、でも「なぜ不安でないか」というとそれは「自分だから」じゃないかと思った。

子どもも自分自身が包丁を使う分には不安はそれほどないかもしれない。なにしろ教えることが必要だ。子どもたちの行っていた保育園は食育が盛んで子どもはみんな小さいころから包丁使いを教えてもらい、年長組のころは豆腐を切る練習をしたのだった。

何が不安って、ちゃんと教えて稽古を積ませられるかが不安なのかもしれない。

帰り際に買ってきた麩菓子の「ふ~ちゃん」をみつけて息子が袋を開け「ふ~、食べるよ」といった。

うちでは「ふ~ちゃん」のことを「ふ~」となれなれしく呼び捨てにしている。よく買っているから。

ふ~を食べる息子が少し大きくなったように思ったので「背がのびたかもね」というと、「まぐれだよ」との返事だった。

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