まばたきをする体

私はぶらぶら人形を持って逃げる

居間のソファの下にDIYセットが隠してある。もとは納戸にしまっていたが出し入れがめんどうになってソファの下が定位置になった。

朝、ソファの前でぼやぼや着替えをしている息子が災害時はおれがこのDIYセットを持って逃げるからと突然言った。

DIYセットは避難にはいらないんじゃないかな」「町の再建に必要だろうと思うんだけど」

一時避難の意味や避難持ち出しの内容について息子に教えねば。

それで思い出したが、私は子どもの頃ぶらぶら人形を持って逃げようと思っていた。

小学校低学年の頃だったろうか。1年生の図工の時間に紙粘土で作った。手足が紐になっていて、つるすとぶらぶらするから「ぶらぶら人形」という。

そのころテレビで災害の備えに関する番組を観て、私は持っている一番大きな袋に思い出の品をあれこれ詰めて、何かあったら持って逃げるように母に頼んだ。そして「私はトイレに飾ってあるぶらぶら人形を持っていくから」と確かに言った。

図工はとても苦手で、ぶらぶら人形も周りの子が上手に着色しているのに私はうまく塗れなかった。そんなに気にいっていたわけでもない。それでもあのころは、自分のものは何かあったときにぜんぶ救うべきだし救えるという気持ちでいた気がする。

子らにそのことを話て「ぶらぶら人形、いらね~~」と笑い合った。

人々は学校へ。私は仕事。

早めに終えて、夕方から息子と中学の体操服の試着にスポーツ用品店へ。学校から1店舗だけ指定があった店はバスに乗ってさらに少し歩いた場所にあり、向かう。

バス通りは良く通るが、降りて通りから入る住宅街は歩いたことがなかった。すごく高低差のあるところでへえと思う。

地域の掲示板には様々な催しが中止になる知らせが貼ってあった。音楽会もお餅つきも、太極拳教室も中止だ。

試着と注文をして、息子の体が大きくなっているのも身にしみありがたい気持ちで帰宅。

娘も帰ってきた。娘は、小学校の卒業式に体育館を飾るためのお花紙をこのところ少しずつせっせと折ってくれていて、お花紙折りの元締めである近所の友人からもらったノルマを全部折り終えた。

「すごい、ありがとう、助かるよ!!!」と感激していたら娘は「折りたかっただけだから」と言っていた。

大人みたいなやりとりだが、これは純粋に本当になんの気遣いもなく純度100%で「折りたかっただけ」なのだろう。娘はエンジョイしていた。

夜はみんなでバンドのTHE1975の「The Birthday Party」を聞いた。


The 1975 - The Birthday Party

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