まばたきをする体

どうも本当に楽しいようだぞ

都心とは逆の方向へ行く通勤電車はすいていて、たいていは座れる。今日も座ってじっとしていると、隣に座った方がずいぶん落ち着かない。とくに悪くないのに私と逆側のとなりの人に「すみません、すみません」と小刻みに謝っている。

(だいじょうぶですよ)と笑って会釈をして目を見ると話しかけられた。「どちらまで行かれますか?」「私ですか? 〇〇まで行きます」「ふたつ先の駅で降りなければいけないんですが、自信がないので到着するころに知らせてもらえないでしょうか」

もしかしてなにか認知の部分に困難を持つ方だろうか。しっかりうなずいて「わかりました」 と伝えるが、これはなかなかの重責だ。緊張して、毎日乗る電車なので分かってはいるが念のためにふたつ先の駅名を路線図で確認した。

電車がゆく。しばらくしてまた話しかけられた「564かける……」わ、難しい計算かな!?

「564かける……10はだいたい5600くらいでしょうか」難しくない計算だったよかった! ほっとして「そうですよ」と答えると「そうですよね、よかった。混乱して分からなくなってしまうんです」とおっしゃっていた。

ひとつ先の駅についた。ドアがしまり、ふたつ先の駅に電車が動き出す。どれくらいのタイミングでお知らせしてあげるとよいだろう……そろそろかな…と思ったときに、隣の方はスッと立ち、ドアの前へ歩いて行った。

おお! 声をかけなくてもちゃんと自分で移動できた! (合ってますよ! 自信もって!)という気持ちを込めて顔を見ると、目を合わせてくれた。うなずき合った。降りて行った。

会社で仕事。明日はバレンタインなので同僚と一緒に近くのスーパーで鯖缶を買ってお世話になっている方々に配った。

終えて帰る。

食パンのローリングストックが確立してきた。常時3斤ほどが冷凍に入っているように足りなくなると買い足すようにしている。

昨年の大型台風で店から一番最初になくなったのがパンで、なるほどパンはそのまま食べられるからある程度家にあると安心なのかもなと思ったのだ。

今日もまたパンを買っておいた。

ご飯を作るうちに子どもたちも帰ってきて晩ご飯。

夕食後はひとつ気がかりなことがあってぼんやりしていた。娘にカードゲームをやろうと声をかけられて「うん!」と答えるがやはりぼーっとしてしまい、そのうち娘はひとりでカードゲームをはじめてしまった、と思う。

あとで「ゲームできなくてごめん、修行がんばってたね」と言った。娘は複数人でやるカードゲームをたまに1人でやることがあり、私たちはそれを修行と呼んでいる。がんばったねと言われて娘は素直にうれしそうだった。

息子は今日卒業遠足でバス旅行に行っていて、とても楽しかったそうだ。息子はどこへやってもだいたい楽しかったと言って帰ってくる。

つい私は、子どもの感想は「楽しかったです」しかないのだから実際どんな思いをしたかは計り知れぬものなのだとか、親を安心させようとして楽しかったと言っているのだとか思って疑って彼を育ててきたが、最近、どうも本当に楽しいようだぞと分かってきた。

本当に、なによりのことだ。

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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