まばたきをする体

電車に乗り遠く知らないまちへ行く

雪というはなしだったが雨だ。

子どもたちは学校へ、私は電車に乗り遠く知らないまちへ行く。

最寄り駅を出てターミナル駅に近づくごとに電車は混んだ。乗り換えてターミナル駅を離れるごとに電車はまた空いていく。たどり着くころには座席はまるでがらがらだ。

電車にはほとんど人が乗っていなかったわりに到着した駅は思った以上に大きくにぎわってたくさんの人がいた。ケンタッキーとかアンデルセンとか富士そばとかいろいろチェーン店がある。駅前では雨の中舗装の工事が行われている。

駅を出てしばらく歩くと雪が降ってきた。

ああ、雪だ! 知らないまちに一人いて雪が降ってきて、寂しくなった。通り過ぎる公園にはみたことのない遊具がある。

さらに歩くと銭湯があった。なるほど。

もう少し行ったところで目的地に到着した。写真を撮って引き返した。

写真を撮る意味はなかったが、せっかく時間をかけてきたので撮った。旅先で風景の写真を撮ることがある、それの最も高純度なただ来た証拠としての撮影だった。

息子が受験する私立の中学校の場所の確認に来たのだ。一度も来たことがないまま受験を決めて(そういうことがあるのだな)、試験日に道に迷ってはいけないと思い念のためにやってきた。

当日は息子を連れて行き、試験を終えたところでまた迎えに行くことになっている。待つ間、さっきの銭湯に入れるかな。

正しくそのとおりに来た道を駅まで戻り、逆方向の電車に乗って帰った。

家についてストーブにあたり買い置きのドーナツを食べた。

昼に美容院に行き前髪を切ってもらう。雪がさらにふってきて、美容師さんと「外降ってるの?」「そこそこ降ってますよ」「雨まじりだよね」「積もりますかね」「積もらないんじゃない?」という話を何往復分かした。

前髪をすっかりすっきりさせ帰って、コートは脱いだが厚めのマフラーを巻いてウルトラライトダウンを着て横になったら寝た。すやすや。

子どもらの帰宅の音で目覚める。息子はおやつを食べてすぐに塾へ。私は娘と買い物に出た。

娘の算数ノートがいる。算数ノートは駅前の100円ショップと、それ以外のスーパーや文具店で140円で売られている。

100円で買えると知ってしまったので140円では買えなくなってしまった。面倒でも100円ショップに行き買う。40円くらいいいではないかとも思うのだが、その度胸がない。小心者とはこういうときに使う言葉かもしれない。

歩きながら、ぼんやり引っ越しを考えていることを娘に相談した。娘は転校したくないから引っ越してもそこから今の学校に通うという。「車があれば今の学校にも通えるんじゃないかな? お母さんゴルフの大会に出るといいよ」「え? ゴルフの大会?」「優勝すると車もらえるから」

息子が帰宅し夜はミネストローネを作った。テレビでやっていた腰痛と肩こりの体操をまねする。

娘は私の「お父さんは心配性」を読み、息子はAviciiを聴いて、私はロベルト・ボラーニョの「通話」を読んでからそれぞれに寝た。

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日記の本のBOOTHでの通販は終了しました。ありがとうございました。
・大阪のシカクさんで店舗販売とウェブ販売していただいてます(これと、これ
・1月末から赤坂の店舗さんでも売っていただく予定です
・イベントは5月のコミックマーケット98に申込みました!受かるといいな……。

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