まばたきをする体

こんなにも丸鶏が並ぶ

かつて、ガムをくちゃくちゃかむマウント取りの態度があった。実際そういう人を見たことがあるかちょっと覚えがないのだが、なんとなくイメージだけはある。

電車で飴をガムのようになめる人がいたのだ。くちゃくちゃではなく音としてはガラガラか。口内をころがし飴が歯にあたる音がする。ひとりしずかに飴をなめるときに骨伝導的に脳に聞こえる音がフルオープンで出ているみたいなかんじ。

そしてたまにガリガリと噛む音もする。

すごい、飴がガムのようだ! と思った。

そうして電車に乗った午後、会社に休みをもらってあちこちへ行きあれこれ用事をかたずけた。

途中はじめてベローチェでホットドックを食べた。なにもトッピングされていないのを頼むのは少し寂しい思いがして、ピクルスが乗っているのを頼んだがおいしい。しかしどっちみち、なにを頼んでもだいたいのものが私はおいしい。

所用を終えて、自動販売機で缶のセブンアップを買ってそこらに座って飲んでその風情を味わった。自動販売機でわざわざ買うのもちょっといいし、缶なのもいい、しかもコーラでもCCレモンでもなくセブンアップだ。

冬のいい天気の日だった。

夕方、娘と家で待ち合わせをして病院へ行く。予防接種を打ってもらうためだ。予定通り娘と落ち合って家を出た。

出たところで、やっぱり今日はやめておきたいと娘が言うのだった。日程の都合のやりくりで兄が数日後に接種することになっており、その日に私も行きたいと。

ラグビーのユニフォームを着たいから、クリスマスの後に行きたい」と娘は言った。

娘はクリスマスプレゼントに今年、ラグビーの日本代表のユニフォームをねだっている。ワールドカップがクラスで異常な盛り上がりを見せ続けているそうで娘もいまなお夢中でいる。

先日の予防接種のときも「ラグビーワールドカップのことを思って乗り越えた」と言っていた。

そうか……。

わかった。

プレゼントのユニフォームがいきなり役に立つのもすばらしいことだし、そうしよう。

娘は「せっかく待ち合わせたのにすまん」と言った。いや、いいよ。今日思いついたんでしょう。すばらしい思いつきだよ。

そのまま娘は公文へ行って、私は買い物へ行った。肉売り場に丸鶏がたくさん売られていて、クリスマスとはいえこんなに丸鶏が並ぶものだったろうか。

鶏は明日以降買うことにして刺身を買って帰った。

夜になり刺身を食べて、娘は毎年着ているクリスマスの柄のパジャマを着た。いつだったか手に入れて、この時期に忘れず着ているやつだ。

今年もうずいぶん小さくなって脇のところがきついというが、お下がりに出そうといっても今日だけ着るといって寝た。

息子も帰って来た。刺身をご飯の上にすきまなくピシッと並べて海鮮丼にしていた。それからいま読んでいる本のことを教えてくれて、書いている人がすごくいろいろなことを考えているのが伝わるということだ。

そうだよな、考えを深く及ばすという行為そのものにふれられるのは本の良いところだよな。

今日も湯たんぽの力で寝た。

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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