まばたきをする体

氷を揉み溶かしとがらせる

あと5分作戦を導入してから寝起きの悪い娘を起こしやすくなった。

最初に起こすとふにゃふにゃ言う、そこで「あと5分?」と聞くと首を縦に振るので本当に5分待ってから起こす。すると起きる。

寝坊の人の「あと5分」はだいたい嘘だろう、本当は寝たいだけ寝たいはずだ。しかし娘はまだ若く「あと5分」といいながら5分以上寝る自由があるということを知らないのだ。

とはいえ、もうすぐ気づくだろうから、そうしたらまた別の起こし方を見つけねばなるまいな。

ちかごろ朝食にハムではなくソーセージを出しているので子どもたちも私も機嫌が良い。しかし毎日ソーセージにしてしまうとありがたみが薄れるので一袋食べ切ったところでまたハムに戻すつもりでいる。

子どもたちは学校へ。私も仕事。

終えて、少し遅くなったので唐揚げとコロッケを買って帰った。

みそ汁と簡単なサラダだけ作って、あといただきもののたらこがあったので焼いてご飯。

コロッケは3つ、唐揚げは4つあるのでとりあえず一人ひとつずつ皿に付けた。

シンクに置いてある残りの唐揚げを見つけた娘があれはどうするのかと聞く。お腹に余力のあった人が食べたらいいんじゃないかなと言い終わるやいなや「私食べる」と言った。

息子も遅れて「俺も食べる」。じゃあ半分つだね。

娘と息子は一瞬にらみあい、それから普通に配膳された分の食事をとった。ふたりとも持ち分を食べ終わって、私は注意深く半分に唐揚げを切る。選ばせず有無を言わさず両者の皿に置いた。

(よし……)

皿に置かれた唐揚げを見て娘が小声て言うので笑ってしまった。マウントをとるなよ!

息子も真似して(よし……)と言って、またにらみあいながら二人は半分の唐揚げを食べたのだった。

夜になり娘が寝つき、息子はなにをと見ると台所の流しに向かっている。手元には氷を持っており、どうやら氷を揉んでいるようだ。

氷を揉み溶かし、とがらせている。

「見て!」と、とがった氷を見せてくれた。

「熱の伝道を体感するなあ」としみじみしている。

その後も息子は面白がって氷を揉んで溶かし続け、私は本を読んだ。

はっと顔を上げると息子が目の前にいる。

「お母さん、握手しよう」

手を握ると冷たかった。息子は笑って寝ていった。

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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