まばたきをする体

バナナに関しては味は完全に把握した

娘をまたいで起きていく。

寝室の出入り口の手前に寝ている娘を、私の寝床からは導線的によけて通れずまたぐしかない。娘は大量のぬいぐるみたちに囲まれて寝ており、またぐ足元にむぎゅとした感触があっておそらくぬいぐるみの誰かをふんでいるんだろう。毎朝すまないと思いながらいく。

冬がやってきて洗濯の気がすすまない。干したところで乾くだろうかと疑う気持ちがあるのだ。

それぞれに起き出して子どもらは学校へ、私も仕事。終えて100円ショップに寄って帰る。浴槽を掃除するモップが壊れたので新しいのを買わねばならない。

とどこおりなく淡々と買った。それから、アイライナーが切れたのでドラッグストアに寄ったが前日がポイント5倍デーだったことを店頭のカレンダーで知りクワっとなって買わずに通り過ぎてしまった。

明日のアイはラインがないがまあいいか。化粧品の手配というのは本当に気概でしかないものだ。削がれるとどんどん「まあいいか」になる。浴槽のモップはないと困るが、アイのラインはなくてもまあいい。

お化粧は、価値の掴みにく作業だなと思う。ある程度の身だしなみの整理を超えるとあとは「やると顔がかわって可笑しい」というくらいのものだが、でもそれがものすごく楽しいからみんなするんだろうな。

続いてスーパーで晩ご飯の買い出しをして、そうだ、辛子だ! とはっとした。今日のメニューにはとくべつ必要ないけれど、ここのところ欲しいときに辛子がないなと思うことが数度あったのだ。

よく気づいたなとうきうき棚に行くと、しかしわさびと生姜はパンパンに在庫があるにもかかわらず辛子だけが売り切れであった。

寒くなりみんながおでんを食べているからだろうか。肉まんも。

帰った。息子も帰って来てバナナを食べて塾に行った。子どもたちはバナナが好きだ。

死んだ幼なじみのお母さん(私の友人でもあった)がいつか人生に限りのある食事にもう味のわかりきったバナナはいらないと言っていた。本当にそのとおりだな! と思った。ふしぎとバナナに関しては味は完全に把握したという思いがある。リンゴやみかんにはない感情だ。

娘も帰ってきて公文に行ってまた帰ってきた。息子の塾の滞在時間に比べると娘の公文の時間はとても短い。それでも、行って行ったさきであれこれやって帰ってくるのだから大したものだ。

ご飯を食べて娘が寝て、すると息子が塾から帰ってきて、遅れて晩ご飯を食べるので同じテーブルについてぼんやりしていたがとくにしゃべることもなく無言でたまにおたがい見合った。

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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します(ト‐37)。日記の本を持っていきます。文フリ後にBOOTHでも通販します
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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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