まばたきをする体

はじめてガムを膨らませた日が誰にもある

起きて息子が朝早くから塾のテストに行くので散歩がてら会場までついていった。きもちのいいいかにも秋の祝日の朝で空気を吸いだめする。

最近息子から実はテストはわりに好きだと聞きだした。勉強よりもらくだし楽しいそうだ。勉強は知らないことを覚えたり分からないことに立ち向かう作業だけれど、テストは分かる問題を書いて分からない問題は書かないだけの話だものな。

勉強とテストは全く別のものなんだな、私は子どものころほとんど勉強をしなかったのでこういうことを本当に知らない。

息子を見送り家に戻ると連休の初日からやってきていた子どもたちの父親が身支度をしていた。

玉ねぎを植えなくちゃいけないんだ、という。彼は普段山で野菜を作るなどして暮らしている。荷物を背負って帰って行った。

着替えながら適当に雑に見送った娘だが、そのうち元気がなくなった。どうしたのと聞いても応えず、ついに寝床に入ってしまった。

娘は父ととても仲が良いのでさみしいんだろう。

しばらくして布団を開けて中を見ると、娘は目は開いたまま横になっていた。よしよししてまた布団を閉じた。

少しして起きてきた。だんだん元気になってきたようで、餅が食べたいというので昼に焼こうねと約束した。

息子も帰って来て餅を焼いてみんなで食べた。

午後は娘と文房具を見に大きな文具店へ。娘はかわいい文房具が見たいらしい。

ファンシー文具という世界を完全に忘れて生きてきたが、その品ぞろえを見ると驚くほどいちいちちゃんとかわいらしい。

持ち物のひとつひとつをすべてかわいいものにという気持ちは、需要と供給、どちらが先だったのだろう。やっぱり需要なのかな。

娘は悩んで結局何も買わず、併設されている100円ショップでバレエのヘアネットを買った。

息子から電話がかかってきて、3時のおやつを買ってきて欲しいというのでどら焼きを買った。娘はグミを買った。

エコバッグを持ってき忘れたがレジ袋はもらわず、手持ちのお弁当箱サイズのトートバッグにむりやり押し込んだら6個入りのどら焼きのパックが半分はみ出した。

娘はこれ恥ずかしくない? というが、私は恥ずかしくないよと答えた。

年をとると恥を感じづらくなるというが、それは「誰も自分を見ていない」ことを知るからではないか。

帰って息子と私はどら焼きを食べた。娘はグミだと思って買ったのがガムだった! といってガムを噛んでいた。チューインガムで、静かに座って噛んでいたが「わたしはじめてガムふくらませたかもしれない……」という。

もう一度やるというので見ていると上手に膨らませた。すごい! おめでとう!! 兄はまだガムを膨らませられたことがないらしい。それを知ったときの娘の嬉しそうな顔よ。ふふふ、よかったね。

それにしても、そうだよな、人生にははじめてガムを膨らませた日というのがあるのだな、誰にも。

夜は大根の葉とにんじんの葉でお好み焼きを作って食べた。

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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します(ト‐37)。日記の本を持っていきます。
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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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