まばたきをする体

こういうものなんだからと声を殺していた

少し早く起きて社会科見学に行く息子に弁当を作った。ジップロックの四角いコンテナ(タッパーみたいの)におにぎりとウィンナ―と卵焼きとあとあれこれ詰めた。

それから朝のパンを焼こうとすると、食パンが変な形をしている。そうだ、昨日スーパーから持って帰ってくるときリュックに無理やり入れたのでつぶれて曲がってしまったのだ。

食パンをつぶしてしまったのはまったく私の責任だが、形が整わない食べ物を食べるのはむしろ好きだ。

わけあり品といって安く売られる商品があってよく人気だと話を聞く。あれは「正規品よりも形が悪いため安い」から買うのはもちろん、「正規品よりも形が悪い」ものを食べること自体に興奮があるような気がしている。

曲がったパンを曲がったまま焼いて、息子は食べてさっさと出かけていき、私は娘とゆっくり食べた。

娘も学校へ。私も仕事。会議がありみんなでもみじ饅頭を食べた。終えて帰ると息子も帰ってきた。

社会科見学どうだったんだい、と聞くと、おー、とのこと。

現地までは電車移動だと聞いていた。行程票を見ると行きはまだ通勤通学ラッシュが抜けきらない時間だったので心配していたが、子どもが一つのドアに数人で細かく分乗して問題なく移動できたそうだ。

周りの大人や学生さんたちはみなあたたかく見守ってくれ、息子いわく「ファーブルが昆虫を見るときのようなやさしい目」だったそうだ。よかったなあ。きみらが謙虚にきまりよく乗ったからだろうと言った。

それにしてもファーブル急に出てきたな。

娘も帰ってきた。玄関に迎えに行くと口をぱくぱくさせている。しばらくして「ただいま」というので、今のなんだったの? と聞くと「声を出さずに50音の口の形をしていたんだよ」とのことだ。

それから娘は、ぎりぎりのぎりぎりまで削った赤青鉛筆を見せてくれた。赤の部分は完全に使い切り、頭とお尻がどっちも青で全長がもはや3cmくらいになっていた。

夜はタコのマリネを作ったが酸っぱくしすぎた。私と息子は静かに食べたが、娘がしばらくして「すっぱくてちょっともう食べられない」といい、それで私もやっぱりそうだよね!? と思った。マリネだからすっぱいのは当たり前だ、こういうものなんだからと声を殺していたが、これはすっぱすぎた。

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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します。日記の本を持っていきます。
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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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