まばたきをする体

横へ横へと相撲をしていく

台風が去り寝たのだった。起きると表は静かで、道にはたくさん葉が散らばっているようだ。よく晴れている。

居間では雨戸を閉めた部屋で電気をつけて息子が本を読んでいる。雨戸を一緒に開けた。

娘も起きてきて、夜の間にもしここらの人みんな避難していなかったら? と言う。そういう気分の夜だった。役場のサイトを開くと、避難勧告が出ていた区域も夜中に勧告は解除し、朝に避難所を閉鎖したとあった。

テレビをつけると浸水した地域の様子が映った。地盤が弱まっており引き続き警戒が必要だとアナウンサーが言っている。終わった人は終わって、終わっていない人は終わっていない。天災は一体感があるようで結果的な困難にいつもとてつもなく大きな差がある。「水で大変なところがあるみたい」と子どもらとテレビを観た。

断水があったらと容器という容器に水を張っており、もしこのまま水道が大丈夫だったらあの水は洗濯に使おうと台風が去るころ思っていた。ざぶざぶ洗濯機に水を移した。

みんなで食パンを食べながら、少し蒸すのでテーブルの脇にある出窓を開けると娘が「あっ」と言った。ピンクのポンポンが落ちたよ!

わー、しまった。気づかなかった。「目が付いてるんだよ」と娘。娘はポンポンを良く作るが、飾ってあるもののいくつかには目として黒いビーズが2つつけてある。

娘は落としたものには目がついているからより心配だということを言ったのだろう。目がついていないポンポンと目が付いているポンポンでは目がついているもののほうが救出せねばという気持ちが働く。

ご飯を食べてから息子も誘って外に探しに行った。ちょうど真下の道に落ちていて無事に救出して、そのまま買い物がてら散歩にでかけた。

「おっ、これはすがすがしいな」と息子はいい、娘はおちているどんぐりを拾って袋に集めていた。

店々は普段より開店時間を遅らせながらも少しずつはじまっている。

商店街に古い商店を居抜いたカフェがあり、シャッターもなく薄いガラスの入った建具の戸しかないようなのでこれは今回の台風では難しいのではないかと心配していたのだが見るとなにごともなく閉まっていた。

午後は仕事があり娘を実家の母にあずけに行く。

実家も無事で、やはり大量にキープした水を今朝洗濯に使ったそうだ。

昼ご飯は食べて出たのだがホームパイと昼食の残りだというチャーハンを小皿に少しもらって仕事へ。うまくいって安心した。

娘はそのまま今日は実家に泊まる。息子とふたり分の晩の買い出しをして帰った。冷蔵庫に買ったものを入れていると息子に、もしかしたらこれ言われるかなと事前に予測していたことをまんまと言われた。

なんかハロウィンでうかれてるね。

買ったプリンと飲むヨーグルトのパッケージがハロウィン仕様だったのだ。

いや違う、欲しいものを普通に買うだけでもいまは何から何までハロウィンのイラストが入っていてどうしてもハロウィンを楽しみにしてる人みたいなことにやむを得ずなってしまうのだとひとしきり弁明する。

でも私はうかれているのも嫌いじゃないよ! と付け足した。

夜になりラグビーのワールドカップの試合を見た。私も息子もルールをよく知らないが、盛り上がった。隣の家からも歓声が聞こえた。

子どものころ実家の父が学生ラグビーをよく観ていたように思うが、こんなに猛々しいスポーツだっただろうか。選手はみなとても冷静で礼儀正しいが闘志のあふれがすごい。

息子が横へ横へと相撲をしていくようだと言った。

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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します。日記の本を持っていきます。
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