まばたきをする体

夏の終わりにやってくるお札のおばあさん

息子は作文教室の先生やほかの生徒のみんなとプールに行った。

作文教室のおじいさん先生が今年の夏から毎週土曜日に生徒の子どもたちを市民プールに連れて行ってくれるようになったのだが、秋になってもその勢いは止まらないのだった。

この感じだと冬になっても行くんじゃないかと思うと息子は言っている。

土日の朝はラジオをかけないので静かで、起きてきた娘となにか音楽でも聴こうかとはなしてGoogle Homeに「楽しい曲かけて」とリクエストしたら「スポティファイで『とんぼのめがね』を再生します」というのだ。

んっ? と娘と顔を見合わせていると童謡の「とんぼのめがね」が流れて我が家は「とんぼのめがね」を聴いている家になった。むすめがGoogleに、もういいよと言ってまた静かになった。

静かになってしばらくしたころお囃子が聞こえた。

そうだ、今日明日はちかくの神社が秋祭りだ。お参りにいかないといけないねと娘とはなして、それで思い出したのだが今年はお札のおばあさんが来ていない。

このあたりの家々にはおまつりの前、夏の終わりごろにお札のおばあさんがたずねてくる。

神社のおふだを1枚1500円で売って歩くのだ。あやしいものではなく、おばあさんは商店街にある畳屋のおかみさんであり町会の役員さんでもあって1500円は町会費として使われると聞いた。

いつも浴衣を着て現れる。腰はまがっているがかくしゃくとして私はファンだったのだが、体でもお悪いのだろうか。そして、1500円集めなくて町会は大丈夫なんだろうか。

家には去年の夏まつりの前におばあさんがもってきてくれたお札がはってある。毎年張り替えていたんだけどな。

昼にチャーハンを作ったら完全に失敗してしまった。なんだか豪快な気分になっていて油も調味料もたくさん入れすぎた。味が薄いときの失敗は笑えるが、濃い時の失敗は笑えない。食べながらどんどん落ち込んだ。

子どもたちも盛った分は食べていたがやはり心なしか静まりかえっている気がする。あとで、味が濃すぎて胸焼けしない?…というと、大丈夫とのことだったが、豪快な気分で調理するのには本当に気を付けよう。

午後は娘と神社にお参りをして、お祭り屋台でくじを引いて、へんなおもちゃを当てて、公民館のバザーですみっコぐらしのマスコットを見つけて買い込んだ。

それから、明日息子が塾のテストを受けるので受験票のPDFをコンビニで出力した。

家庭用のプリンターを壊してばかりいたころがあった。買っては壊して修理したり買い替えたりを続けて、これは……もう無理だな! と思ったころコンビニでのPDFの出力サービスが始まったんじゃなかったか。

それからはもうずっと紙への出力が必要なときにはコンビニに行く。

出力したいデータをPDFにしてPCからスマホに送って、スマホにいれたアプリでデータをアップロードする。コンビニの複合機WiFiでつないで複合機にデータを送って出力する。

この一連の流れを踏んでコンビニに払う代金が10円なのだからすごい。

けっこうな手数があって私はその手数をちょっとおもしろいなとおもっていて、なんだかちょっといわゆるコト消費的にとらえているところがあるなと思った次の瞬間の支払い金額のあまりの安さよ。

明日は息子と朝早くでかけるので、娘は妹と姪っ子の家に泊めてもらうかね、ということになり妹の家へ。

夕飯をみんなでサイゼリヤで食べた。子どもたちはハンバーグを頼んで、私は季節のパスタみたいなものにしようかなと考えていたら、妹が私はミラノドリア、ミラノドリア一択、と言っている。

安いから? ときいたら目をむいて「おいしいからだよ?!」と言われてはっとした。確かに美味しいんだったよなミラノドリア。あまりに安いので価値の魅力を安さに感じることにとらわれすぎていたよ。

妹の迫力に飲まれるように私もミラノドリアを頼んだ。

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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します。日記の本を持っていきます。
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