まばたきをする体

頭の上のドローン

1メートル頭上、ドローンが飛んでいる。小型ではない。結構な大きさの、空撮とかに使うやつ。 えっ、でかいな。そんなに大きいの飛ばして大丈夫かな。でも部屋の空気をまぜなくちゃいけないから。空気がよどむから。 空気をまぜて、きれいにして、あと涼しく…

目が事態を解像しない

手の甲にお灸をしたらうっかりすえすぎて水ぶくれができた。アクティブな部分だから何かの拍子に強く触ってやぶけて、直径3mmくらいの傷なのにしっかり痛くて気が散る。 これくらいのことで平時ではないように思うのだから、日常は危ういものだなあと感心し…

ペットボトルを海に捨てない

はっと目覚めると朝はまだ早い時間で、普段ならもう少し寝るところもう起きた。 時間に余裕があり息子の弁当を首尾よく作って機嫌がいい。 料理が得意でなく好きでもないのでお弁当は面倒で面倒で面倒でしかないのだけれど、やってしまえば手は動くもので、…

青信号だけがずっと「ラッキー」

雨がふりそうだけど洗濯を表に出して、天気予報のアプリを開くとあと2時間で雨がふると出ている。 いちにち在宅勤務の日だから降りだしたら取り込めば良いのだけど、降雨しはじめてすぐに飛び出せるだろうか。いちかばちか! でバーンと外に干して、気づいた…

みんなの口がこんなにもおいしい

息子とふたり、間違え間違えしながらつけかえた台所の蛇口は実はちょっと曲がっている。 曲がっているというか、ほんのすこし、微妙に微妙に斜めになっている。壁に水と湯水のふたつの穴があるタイプだから、穴の間を橋を渡すように蛇口自体がとりつく。この…

歯が起こす

目を開けるがまだ眠く脱力してまぶたはふさぐように降りた。唇は薄くあいて上の歯と下の歯のあいだも1センチほど隙間があった。 うつら、として、頭にはまだなにも覚えがなく、またうつらとしたところで、突如、上の歯と下の歯が カツン!! とかみ合わさり…

安ジャムと高ジャム

久しぶりにジャムが食べたいと娘に言われて、よっしゃまかせとけと買い物に出かけた。 家では朝、食パンを食べる。最近は大容量タイプのはちみつに頼り切りで、ジャムはしばらく買っていなかった。 ジャムは高級なのは買わないにしても、普通のやつでまあま…

シナモンロールがある、しかもでかい

娘と成城石井へ行こうというのだから気持ちとしてはほとんど遠足だった。 前日から約束しておけば、うきうきそわそわして、ネットで最近話題の商品を検索するなど楽しみが前倒しにできたのだけど思いついたのは当日だ。 娘は休みの日、故意に寝坊するから朝…

冒険物語の景色

驚愕した。娘が、ピーナツバターはつぶつぶが入っていない方がいいと言ったのだ。 私はこれまで、自分がつぶの入っている方がどう考えても好きだから何も考えずにつぶの方を買い続けていた。突然のこの告白にはまったく面食らった。 ピーナツバターにはつぶ…

しかしそれはさみしい

子どもの日は鯉のぼりを出して飾ることによりすでに使命として終わった手ごたえがあり当日の緊張感が薄い。起きて来た息子にいちおう「子どもの日ですね」と祝いを込めて声をかけると「おれは子どもの日の子どもとして想定されている子どもではない気がする…

建物が驚くではないか

皮が厚くて種の多い柑橘類だった。柑橘類の種類はもはや果実業界には遠い私のようなものにとっても拡大が進んだ思いがあり、把握はまったく難しい。 その思いに呼応するように、もはや自分はなになにという柑橘類ですと名乗る気をあきらめた、なんだか分から…

靴は擦れるものと学んで

胸やけの胃にたまらず家を、財布とスマホだけ持ってボーンと飛び出し、かけて行って着いた病院は閉まっていた。 連休のあいまの平日、休みということもあろうかと事前にホームページで確認し、「おしらせ」の一番上が「PCR検査の予約につきまして」でしかな…

これは詩だよ

サイレンが鳴りサイレンが鳴りサイレンが鳴って通り過ぎない。 通り過ぎないままさらに鳴り募り、ああ、サイレンが集まってきているんだと分かった。 窓を開けると近隣の知った方も何人か不安そうに表を眺めている。家の先のT字路から停まったパトカーの後ろ…

自分のことしか考えられなくなっていく

庭は持たないが家に付随した管理せねばならない細く狭い土地がある。砂利を巻いて押さえてはみたもののまったくかまわず草が生えてくる。 今年も暖かくなって草の勢いが増し、どういうことか例年になくヒメジオンがよく育った。 放っておいたらここぞとばか…

ミロがなくなる

村の者どもが騒がしい。騒然とした顔と顔のなかに、悲壮のようなものがうかがえる。 「どうしたんだい」聞くと者どものうち、年長のほうが「もうすぐなくなる」と言った。 「なにが」「ミロが」 ミロがなくなると子らの騒ぐ朝だった。 気持ちはわかる。この…

水漏れを飼う

祈りの力みたいなものへの信仰心に気づかされるのが、身の回りのなんらかの不具合だと思う。 きのう台所の、うちはシステムキッチンというのだろうか、シンクとか引き出しとかが一体になったやつが据え付けてあるのだけど、その端っこから水がしみ出した。 …

「まあいいか」が「まあよくない」をチョイスする

朝は粉を汲む。 息子に青汁を、私に青汁とプロテインを、娘にミロを。それぞれはもともと青汁のパッケージとしてこの家にやってきた容器に入れている。 小さな樽のような、胴の幅があって口の広いスクリューキャップの容器で粉の収納にちょうどいい。そこか…

浮き毛とめがねのとりかえし

なじみの美容師さんのところに久しぶりに出かけていくと、長い私の髪を見るなり「うねってるね~っ」と忌憚なく言うから「もしかしてこれはストレートパーマのかけどきですかね」と薄々考えながらも言い出さないままだったことばがよどみなく出た。 数年前、…

煙に巻くような買い物

活気がなけりゃいけない、というのはうちの母の思想で、忙しく働く人たちが声をあげてあたりを行きかい、時間などは飛ぶように過ぎ、良いことがあったら豪快に笑って、悪いことがあったら愚痴を言って泣く、そういうがやがやしたおしあいへしあいのなかで急…

歯をみがけば、私にはわかる

出かけようとランドセルを背負う娘がまだ歯を磨いていないのが私にはわかり、「歯、みがいた?」と聞いて娘は「うん」というのだけど私は歯を磨いていないことを知っているのだった。 朝は私が起きて洗濯機をかけてご飯を作る、平行して息子も起き出す。ふた…

景色としての大人気! ビリヤニ

どんがらどんがら、積み木みたいに冷凍庫からお椀型のタッパーに入った冷凍ご飯を出しに出して積んだ。凍ったご飯は温かく柔らかいあのおなじみの食べるご飯と違い無機物的で、なにか雑に扱っても良いもののように思わせる。乱暴にどんがらして、レンジに窮…

娘はまちで裸足の人をよく見つける

このところ娘とよく出かける。娘に教えられ、2度、まちを裸足で歩く大人を見た。 最初はふたりで買い物にでかけた日だった。GUで春物を買い、それから書店に行って漫画を物色、さらにアニメイトでグッズを見る予定でうきうきターミナル駅にやってきた。 首尾…

シングルレバー混合栓をとりかえる

台所の蛇口から出る水が、きゅっと締めてもすぐ止まらなくなった。 数秒、ダダダと漏れる。 突然のことだったと思う。さっきまでそんなことなかったのに、急にダダダははじまった。 計量カップで測ると80ccくらいダダダしている。 蛇口は我々が引っ越してき…

和菓子を売っていまして

住宅街で若者がカートに乗せたあれこれを引き売りするのを見るようになったのはいつごろからだったろうか。 最初は豆腐だった気がする。 豆腐の引き売りというと、サザエさん的な世界線上の昭和の文化として、見たことのない懐かしさとして知っていて、「ト…

すべてが謎のトラックが

早くから部活に行く息子を送り、着席して在宅勤務をはじめるともう立ち上がるのは面倒で、起きてこない娘を声だけで起こそうとするのだけど、届いていないのか、耳までは届いているけどもうひとつ脳のところまでは到達しないのかなかなか動きがない。 声を大…

これはさては呪術だな

鳩のよく鳴く日だった。 ここいらの一角は鳩が鳴いたり鳴かなかったりする。名前のついた通りまで出ないと頻繁には車も通らず、だから鳴かない日はとても静かで風の音だけ聞こえる。 鳩の鳴く日は鳩の声ばかりが、響かずくぐもって室内まで届き、こちらもだ…

春休みたち

家の人々は学校が休みのうえ午前中に用事もないというので寝かしておき、ひとりでパンを食べて洗濯を干してから8時には在宅勤務を開始して、気づくともう10時前だった。 春休みたちを起こす。 起きだしてなお人々はそこいらにころころ転がってゲームをしたり…

アニメイトになれなれしく

おおい、卵が冷蔵庫にもうふたつしかないのだが、ひとつ食べていいかい。 うっすら聞こえて目を覚まし「いいよ」と言って、そうか息子が遊びにでかけるので早起きしたのだなと私も身を起こした。 息子は「しまった、くっついた」と肩を入れてフライ返しをフ…

GUCCIを夢見る娘

夢が多い夜でうなされる。 寝苦しく朝早くに目が覚めて、寝巻が暑すぎることに気づいた。 冬のまま厚手の起毛のフリースを着て、就寝時など暖かすぎるくらいでちょうどよかろうと思って寝たがまんまと苦しんだ。 先に起きていた息子と静かにパンを食み、送り…

そんな勘違いがあるのか

サッカー部で履くスパイクがすり減ったから新しいのを買ってほしいと息子がいう。 スパイクか……。 いま履いているものは、おととし入部してすぐのころ買った。 スポーツ店に連れ立って行って店内を見回すがどう選んで良いかまったく分からず、店員さんに聞い…