まばたきをする体

パンはパンでも食べられるパンはパン

そうだ、今日は朝はやくから会議があるんだと、あけがた目が覚めて思い出して、リモート会議だしいつものように起きれば問題なく間に合うものではあるんだけど、こうして気づいてしまうと絶対に寝坊はできぬという気持ちでそれからずっともはや起床時間を待つようにうっすら寝た。

だから目覚ましが鳴ると鳴るなり起きて、寝間着のわりに顔はきりっと会議の気持ちがととのっている。

さっさと用意をして子らは自分のペースだったが朝が進んだ。

朝の会議は朝から大盛り上がりでめちゃくちゃに笑う(私はおもしろい記事を書いてもらうのが仕事なので会議もとてもおもしろい)。

このコミュニティには朝会議と夜会議があって、朝が得意な人たちは朝会議に出る。夜が得意な人は夜に。だからどちらの会議もみんな機嫌が良い。

先日まで東京はとてもあたたかかった。わたしなどサンダルで出かけてあたたかさを試して合格するくらい。かと思ったところで寒くなったのが今日だった。

暖かい日は2、3日だったろうか、それくらいだけどストーブをつけない癖がもうついてしまい、寒いのにしばらく我慢した。

会議を終えておちついて朝読めなかった新聞をひろげると落ちた広告は駅の近くの金物屋ので、創業100周年をむかえるんだそうだ。記念にきゅうすを4割引きで売ると書いてあり、GAFAとかないどうぶつ村の話みたいで良い。でもうちにはきゅうすはもうあるんだよな。

やいやいやって午後も仕事を続ける。学校から帰ってきた娘が「ねえ、お母さん!」というので見るが娘は私のほうを向いておらず、えっ、なに。そのまま娘は床に丸くなって倒れて笑い始めた。

GoogleHomeに「ねえ、Google」というべきところ「ねえ、お母さん」と声をかけてしまったらしい。

声量と思い切りの良さから私をかついでいるとは思えず、そんなことあるのか。小学校の先生をうっかりお母さんと呼んでしまってはずかしい思いをするのはいわゆる子どもあるあるだけど、いまやお母さんと間違えるのがGoogleとは。

娘はちゃんと恥ずかしがっていて、先生じゃなくてGoogle相手でも恥ずかしがるものなのだなと思った。

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仕事を終えて夜は昨日のすき焼きの残りで牛丼的なことをしつつ、あとは汁物でなんとかと思い買い出しに出た。

スーパーはよく混んでいて行列が長い。並んでしばらく、買い物リストにあるはずのヨーグルトをカゴに入れ忘れたのに気づいた。列を抜けるのは面倒だしいいか。あきらめたところで、あ、コーヒーも忘れてるな。

列を抜けた。

気持ちが達した。

ヨーグルトだけだと足りないが、+コーヒーで気持ちが列を抜ける気持ちに一気に達したのだと思われ、心の中に駆け引きがある。

すき焼きの残りは目算よりも少なかった。なべ底の見えぬこの様子、3杯分くらいあるとは思ったがきっちり2杯分しかない。

育つ人にやり、私は残りのたれをかけた。うまい。

食べながら娘が「パンはパンでも食べられるパンはなーんだ」という。

食べられないパン→フライパン、じゃないんだ。

「ええと……パン?」
「じゃなくて! ちょっとよく聞いててね。パンはパンでも食べられるパンはなーんだ」

……?

「……パン。じゃないの?」

娘はあたりまえじゃん、どうしてわからないのかよみたいなあきれたような顔で「フランスパンとかさ! あるじゃん」といって、そんななぞなぞあるのか。でも確かに文章としてはおかしくない。

「じゃあ、メロンパン」息子がいい、私も「カレーパン」。娘は「クリームパン」。

「あと、ジャムパン」「あんパンも」「うぐいすパン」「くるみパン」「豆パン」

パン大会だった。

夜、毛生え薬が切れた。ネットで注文して寝た。

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ケーキ屋は混むのではないか

鹿肉がある。

両手にいっぱいくらいの立派な塊で、山に暮らす子らの父が近所の猟師さんから物々交換でいただいたのを先日食べ切れないと譲ってくれた。

シチューにすると良いと聞き、ルーは早々に買っておいたのだけど冷凍したままになっていた。祝日だじっくりやろうと朝思いたった。

しかしまるっとこれが、冷凍になっているのだった。なんとなく朝のうちに常温に出せば解凍されるだろうと思ったが、いや、これは半日では無理じゃないか。

調べると解凍は常温ではなく数日かけて冷蔵庫でやるべきとあり、うお、数日。料理勘がないのでこういうことが本当に多い。

料理もそうだし、慣れない手作業はなにもかもが思ったようにいかないのがすごい。本当にきっちりなにもかもで、手芸も工作もそうだ。

鹿の肉はおとなしく冷蔵庫にうつして様子をみることにした。

と、ここでよくないものをネットで見てしまい一気に落ち込む。誰かに言えばきっと誰もが「たいしたことじゃないし気にしないでおきなよ」というくらいの話なのだけど落ち込む。

子らに相談するとそのまま「たいしたことじゃないし気にしないでおきなよ」と言われ、もうちょいなぐさめちょうだいよと思うがせびるのはよして、麻雀ゲームに逃げた。

そして、これはケーキだなと思った。口を体を甘やかすものを食べよう。

本日、昼ご飯はケーキです。

居間の戸をバーンと開けて宣言した。

お、おう……。という感じの子どもたち。

隣街にコージーコーナーがある。ネットで商品一覧をみんなで観た。

「ひとり二つ食べる。それで昼をすます」
「えっ! そんなことしていいの」
「栄養がやばい」
「じゃあ……ケーキはひとりひとつにする。あとはパンとサラダをたくさん」
「冷蔵庫にリンゴもあるね」

それから息子がハッと日めくりカレンダーを見て、今日は天皇誕生日だ、と言った。誕生日という言葉が刷り込み的に脳にケーキだ! と思わせていたとしたら、ケーキ屋は混むのではないか!? というが、そんなことあるかな。

3人分のケーキのリストを持ってバーン! と家を飛び出した。

息子の言う通りケーキ屋は混んでいた。言う通りの理由ではないと思うけど、混んでいた。

静かに列に並び、選んでいたとおりのケーキを買うはずが、自分の分はコージーコーナーの名物のでかいチーズスフレをつい買ってしまった。ケーキといえばケーキだけど、いわゆるショートケーキに代表されるようなケーキではない。

今日はケーキを食べるぞ! という気分を自ら破壊したような恰好に。

スーパーに寄りサラダの野菜とパンも買った。

帰って食べた。うまいよう、うまいよう。子どもたちの冷静な判断により用意したサラダがとても良かった。

それで理解したが、子どもたちにはここにスパゲティの一杯くらいあってしかるべきだったのだ。

考えればわかりそうなことをやってみてやっと判明させている。鹿肉が解凍できなかったのと同じことがケーキでも起こった。渋滞してるな。

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午後は図書館に行ったり、買い物に行ったり、コンビニに発送に行ったり、やることをやっているとすぐにすぎて、夕方から仕事の収録があってリモートで出た。

私が世話になる仕事の現場にはいつも機嫌のよい人しかおらず、これは本当にすごいことですごい。すごいことですごいとしか言いようがない。楽しくて一気に元気が出た。

終えて買い物して準備しておいたすき焼きを煮て食べた。

夜になって少し冷えるのでここ数日あたたかくて用なしになっていたストーブをつける。

すると息子が「ちょっと! バランスクッション(中に空気を入れてつかうゴムのクッションがうちにはあるのです)がぱんぱんになってるから見て!」という。

ストーブの吹き出す熱気が少し当たるくらいの場所に置いておいただけなのに中の空気が膨張したらしい。おお~、とみんなで見て、並んで上に立っていつもよりパンパンの感触を楽しんだ。

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本当に家族で楽しいだろうか

保有する仮想通貨の値動きを一緒に見ていた息子が、これはそろそろ手放しどきではというのでガチホの概念を解く。

「しかしこのままでは危なすぎます」
「いいのじゃ、危ないならそれはそれでいいのじゃよ」
「博士~!」

子どもらは学校へでかけ私は今日も在宅勤務の一日。

夕方になって、最近、娘と息子は同時に帰ってくることがある。娘は小学生で息子は中学生、学校は違うがスケジュールの偶然でそういうことになるようだ。

娘は友達とわいわいがやがや歩いたり途中少し走ったりして帰ってくる。いっぽう息子はひとりなので娘たちに絡まれ冷やかされ茶化されないように彼女らの姿をみつけたら猛ダッシュで自宅へ逃げ込むか通りすぎるまで身を隠しやりすごすなどしているそうだ。

自宅と違って屋外は偶発的なコミュニケーションが発生しそれにより身の危険が起こりえる、ちょっとサバンナみたいだなと思った。

一命をとりとめ帰宅した息子のすぐあとに娘が帰ってきた。

それから娘は夜はパンが食べたいといった。

唐突だがなるほど。通常この家は晩はご飯におかずと汁でしのぐことが多いが、たまにはパンもいいかもしれない。

息子はそんならパンにはどろどろしたものをつけて食べたいと言って、なんだろうそれは。聞くとどろどろしたものならなんでもいいという、ディップみたいなものを想像してるんだろうか。

チーズフォンデュみたいにすると良いかね」
チーズフォンデュってなに」

知らないなら見せてやろうと、パンとチーズを買いに出た。チーズはカマンベールチーズの丸いやつをレンジで溶かせばいいだろう、カゴメの瓶のサルサディップを見つけてそれも買った。

少し良いハムも買うと会計がいつもの3倍くらいし、パン食の恐ろしさを知る。

がやがや人が食卓に集まり、洋食だ洋食だと食べ合った。

息子はどろどろしたものを喜んでおりよかった。

娘がテレビをつけるとサブスクリプションのサービスの代表としてNetflixSpotifyが紹介されており、「う……うち……両方入っている……」と感激していた。テレビで紹介されるほど有名なサービスにうちが……! と、身近なあの人たち、有名人だったのか! みたいな感慨を得たようだ。

贅であるね、これは。

番組はちまたのさまざまなサービスを伝えるもので、続いてくら寿司のシャリとネタを別売りして、家で合体させて食べられるという商品が紹介された。出演者からの感心を集めている。

これ、友人と渋谷の井の頭線の高架下にある店舗に行ったときにポスターで見たやつだ。「家族で楽しく!」みたいな触れ込みがされていて、こういうとき私はつい本当に家族で楽しいだろうか、楽しくなかったらどうしよう、なんと切ない商品か、と余計な心を震わせてしまう。

「仲良し家族」的な表現についいつも反応してしまう。現実はさておき、ドラマでも映画でもなんらか物語が家族を取り上げるときその家族関係はいつももろくデリケートだ(そうして物語るのだから仕方ないんだけども)。

だから広告などが一転家族というものを何の問題もない明るいもののように取り上げるのに慣れない。

寿司が評判のようで本当によかった。

家族の仲は良かったのだ、と安心した。

食後は娘だけテレビを観続けて、私は隣室で本を読んでいた。

「相棒」

と娘が言うのでどうしたの、と聞くと、ドラマの「相棒」のコマーシャルが流れたからかっこよく「相棒」ってタイトルを声にだして言うだけ言ってみた、とのこと。「観たことないけど、できるだけかっこよく言った」そうで、リスペクトがある。

一方息子はと探すと自室であおむけで布団に入り横になり目を閉じていた。スマホからは音楽が流れている。

「聴いてるならいいけど寝るなら音楽消しなよ」というと「俺は寝る、しかし音楽は流れ続ける」ということだ。

娘が止めないストップウォッチを見せてくれた。寝る。

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嫌な人のことをちゃんと嫌な人だと勘づいてほしい

嫌な予感がして嫌だな~! と思いながら起きたがなんも嫌なことはなかった。日曜日だし、そのうえ今日はすごくあたたかくなるらしい。

なんなのかよ……と損をしたように思いながらホットケーキとソーセージを焼いて子らを起こす。娘はわたしがつけた電気をわざわざ消してまでして寝続け、息子だけ起きてきた。

食後息子はWiiで卓球をはじめた。ニンテンドースイッチスマホがあってなお、わたしたちはけしてWiiの存在を忘れない。なんならWii Fitの存在も忘れてはいない。

最近は娘はテトリスが、息子と私は麻雀ゲームがやりたくてDSがひっぱりだこになってるし、それくらいのゲームの程度でうちの人らは十分のようだ。

娘は昼前になって起きだしてホットケーキをやっと食べていた。当然昼になってもおなかはすかず、Wiiの卓球をし続けていたが、息子と私が昼ご飯はそばを食べようそうしようと茹でると娘もなんとなくたぐった。

食後、息子が杏仁豆腐が食べたいのだがと言いだした。「買ってくれば?」「作れないかな」「えっ、作るとなると、杏仁なんとかみたいなの要るよ」

息子はGoogleHomeに杏仁豆腐の作り方を聞いてレシピを筆ペンでレシートの裏に書いたが、書いただけで作らず満足したようだった。

台所の机の上にそのレシートがふわふわ置いてあり、なんとなく不憫になって同人誌の発送がてらコンビニで買ってきてやろうとでかけた。

ぬっ!

なんぞ。

あたたかい!

今日はあたたかな日になるでしょう、とは前日ニュースの天気予報で聞いていたがこれほどか。コートを着てきてしまった。マフラーもインナーのダウンも置いてきたのにそれでも暑い。

急いで同人誌を送り、それから一度帰ってコートを置いてサンダルでもう一度家を飛び出した。これでどうだ、これでもいけるか! という挑戦の思いだったが、まったく問題ない。それくらいあたたかい。

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感心してスーパーで杏仁豆腐と、娘にもドーム型で中にカスタードクリームが入っているカステラみたいなやつを買って帰った。

そばの昼から1時間くらいしか立っていないのに二人はすぐに食べた。特に娘は朝の遅さから昼があまり胃に入らなくて、それを美味しいカステラで埋めておりちょっとずるい。自分が買ってきたのだけど若干の納得のいかなさ。

娘はアニメを観ていて、私は買い物を整理したあと隣でアイロンをかけながら声だけ聞いていた。

ものすごく嫌味を言う人たちが出てくる。嫌味に対して、負けないぞ! となる主人公。

私などは野暮で物語になんやかんや感じやすいので、どうしても、ドラマであれ嫌な人のことはちゃんと嫌な人だと勘づいてほしい思ってしまう。

「きみは自分に酔っているだけだよ、きみには才能がない、相手をするのも疲れるだけだ」などという人に「いまに見ていてください! いつかあなたに認めさせてみせます!」なんて真摯な気持ちを持たないでほしい。

「すみません、勘違いをしまして」と謝ったとしても内心(言い方おかしすぎないか……嫌な感じ)と思っていてほしい。

……しかし案外現実でもこれは難しいことだったりするな。嫌なことを言う人には妙にからめとられてしまう。

なおこれは以前野暮を許してくれるドラマ好きの友人に訴えたが、やっぱり嫌味はあとの見返しにきいてくるから現実的じゃなくても絶対絶対必要、とのことだった。嫌味というのはまったくエンタメなんだな。

娘は観終えて、私のアイロンを引き継ぎ自分のごわごわのズボンにアイロンをあてた。

いちど洗濯すると恐ろしくしわになる素材がたまにあり、それがこのズボンだった。普通のよりもかなりかたいデニム生地で、しわがのびきらないところで娘はあきらめて、今はいているものを脱いではいた。

すぐはくんだ!

晩はたこ焼き。このあいだたこ焼き器を買って楽しかったのでまたやる。

娘を誘って買い物に行って、しかしタコが巨大なパックでしか売られておらず、こんなには食べられないなと検討してやむを得ずイカを買った。

タコ焼きをしようとしてイカを買って帰る人が今日何人いるだろう、50人くらいいるだろうか。

道中、野良猫を見た。ここいらではもうほとんど見なくなったと思っていたが、どこに住んでいるんだろう。よく太っていた。

帰宅後すぐ明日の授業の準備で習字道具を洗う娘に「キッチンペーパーない?」と言われて、あっ! と声が出た。さっきスーパーでクッキングシートは買った。でもそうだ、キッチンペーパーもなかったんだ。

なんで「あっ!」と声が出たかというと、クッキングシートとキッチンペーパーの名前が似すぎているから!

タコ焼きのタコをイカにした焼きは美味しかった。「イカだね」「完全にイカだ」「イカが入っている」という話は終始した。

寝ようと寝床に入ったところカツカツ音がして、屋根を体重のそれほど重くないものが歩いている。ハクビシンか。

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しかけていない罠にかけたよう

朝ごはんを食べながら息子にこれ捨てる? と聞かれ、いや、まだ見てると答えた。

「そろそろ捨てる?」「まだ見てる」のやりとりを私たちはこのところしばらく続けており、笛ラムネのおまけについて。娘とスーパーにいったときに息子にお土産に買ってついてきた。

これは……いらないな……と息子は言うもすぐに捨てるのはしのびなく「そしたらお母さんちょっとながめるわ、ながめてから捨てるから」とそのへんに雑に置いた。

それから息子は見つけるともう捨ててもいいだろうと私に聞いて、しかし私は私で「いや、見る」と答え、徐々に応酬が面白くなってきて、だんだんコミュニケーションの型のようになってきた。

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これはもしかすると一生捨てない流れかもしれない。

土曜だが娘は学校がある。冷凍しておいた炊き込みご飯をあたためておにぎりにして2つ皿に乗せ声をかけると、よぼよぼ起きだして食べ出かけていった。おにぎりはひとつしか食べられなかった。

掃除をして洗濯もしてから本を読んでいると息子がやってきて、残ったおにぎりを食べていい? と持って行った。しめしめ。余ったご飯を置いておくと誰かが食べるの、しかけていない罠にかけたような気持ちになる。

昼はラーメンを食べて、午後は友達に会いにでかけた。

道を行く前を小さな子どもが小さな自転車をこいで走っていて、背負うリュックサックに「となりのトトロ」のねこバスの小さなぬいぐるみをぶらさげている。トトロではなくねこバスをチョイスしたんだなあ。

かばんについたぬいぐるみを見ると、そのかばんを背負った人が買ってうきうき取り付けているのを想像して、お好きなんですね、そのキャラクター、と思ってしまう。

友人とは公園でベンチに座りしばししゃべった。最近観たという「花束みたいな恋をした」についてあらすじを教えてくれ、感心した部分としない部分について話してくれた。映画館ではこれほどにと思うほど観客が泣いていたそうで、これは観に行けば確実に私も泣かされるだろうとふるえる。

借りた本を返し、今度は私から本をあげた。お礼にと帰りに寄った本屋で最近推している作家の文庫本を買ってもらう。

帰って娘の髪をおだんご化してバレエの稽古に送り出し、さっき買ってもらった本と最近自分で買った本をいったりきたりしながら読んだ。

そして、どうしても食べたくなり夜はスーパーの寿司を決意した。昨日がピザだったので2大人類の好きなものを連日で食べることになる。贅沢だと思いすぎてはいけない。こういうことがあってもいい。

子らに決意を伝え「いいぞ!」「がんばろう!」と声援をもらって正座し目を閉じた。近所のスーパーは18時をすぎるとお弁当コーナーに割引シールが貼られる。そのときを待つ。

最近居間の時計が止まった。めんどうがって放っておいたら息子が電池を入れ替えてくれた。古いものなので壊れたのかもと思っていたが電池切れしていただけで復活した。

その時計が18時半を知らせ、カッと目をあけスーパーへ挑む。まったく目論見通り寿司は3割引きであった。にぎりとかんぴょうまきと手巻きの3パックを勇んで買って早く食べたくて早歩きで帰った。

寿司パーティーやはじまる。いさかいのないように平等に分配し食べた。手巻き寿司はコンビニの海苔巻きのようなビニールに包まれていて、海苔の上で筒型のご飯を転がして巻く。なぜか2人で作業するのが流行しわーわーいいながら巻いた。

夜は娘が作文用紙に書いた物語を入力する作業。作文教室の宿題で先生に送らねばならない。

入力が好きなのでばちばち打った。動物の心の読める主人公の、同居する鳥が感染症にかかってしまい困っていたところ、養鶏場に勤める人にあることを教えてもらう。それは薬を作れば助けられるかもしれないというお得情報だった。主人公は徹夜したり朝早く会社に行ったりして頑張って薬を開発する……というもの。

とても良い話だった。薬を作るアイディアをお得情報と表現するなどは、大人にはなかなか思いつかない。先生に送る。

ソファでテトリスをする娘のそばから「ギュっ」という音がした。

「屁?」と聞くと「屁じゃないよ」という。

しばらくしーんとしたあと娘が「なんだと思ったの?」というので「屁だと思ったんだよ」と答えた。

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ピザが食べ足りないのは絶対に嫌だ

アイスの、ピノじゃないんだけどピノみたいな小さくてチョコレートコーティングされたやつを昨日買って、小さいし味が3種類あるし、3つ食べちゃお、と思い手に持っていると朝食をとる娘が

「なに、3つ食べんのそれ」

と言った。

「そんなに食べたらなくなっちゃうよ!」と糾弾するのでも「お母さんが3つ食べるなら私も食べたい!」と所望するのでもない、純粋に心から沸き上がった

「3つ食べんのそれ」

という疑問の声だった。迫力ある純粋さがおそろしく「あ、いや、やっぱひとつにしておく」と2つ冷蔵庫にしまった。

子どもらは学校へ行き、今日は私も出社の日。電車に乗るし事務所では人とスペースを共有するし、そなえて昨日は念入りに髪の毛を洗い、朝はしっかりお化粧もした。

在宅勤務でも仕事の内容は変わらないしクオリティも下げずにやっている自負があるが、以前は仕事にプラスしてこの身支度を毎日していたのだと思うとすごい。

やいやいやって、夕方息子の塾へ受講料を私に行く。支払いついでに先生に息子の態度をよくほめていただき、来年度の中2は英語に今後のキーになる単元がありますので頑張りましょうとはげましてももらった。

先生、私はその中学2年生のころ全く英語の授業についていけなくなり(数学もだけど)100点満点の定期テストで5点を取ったことがあるのです。息子にはその血が流れております。

ほがらかな先生なものだから胸を借りてつい言ったらウケた。

帰りに甘いおもちとお茶をいただく。このもちにはこのお茶が良く合うのです、ということだった。うれしい。先生は甘いものがお好きのようだ。

帰ると息子はDSで麻雀ゲームをしていた。一緒にもちを食べた。

娘も帰宅し午後はスーパーで安売りだった出来合いのピザに、余っていたチーズを足して焼く。

具のさみしい安いピザはチーズを足すと頼もしくなる。

焼けたところから食べる方式にして、1枚目を3人で分けて食べていると娘が「これって何枚あるの」といって「あと2枚あるよ」というとほっとしていた。

「もしこの1枚だけだったら、絶対に嫌だなと思った」

とのこと。ああ、これはもう本当に絶対に嫌なんだろうなという説得力があった。娘は調子よくふざけた人だが、真剣なときの目は燃える。

ピザが食べ足らないのは絶対に嫌なものだが、ここまで本気になっていいのだなと自由な信念を感じた。

食後は息子のやり途中の麻雀ゲームを引き継いだ。開始早々違和感がある。麻雀なので自分以外のほかの3人は人間じゃないやつ(COM戦というんですかね、CPU戦?)なんだけど、3人が牌を場に捨てるスピードがこれまでより早い。

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さらにキャラクターのセリフも出ない。

聞くともたつくのが嫌だから設定を変えたんだそうだ。

む……息子が。

いつもおなかをすかせ抱いてもおんぶしてもベビーカーに乗せても外に連れだしても泣き止まず、授乳時しか落ち着きのなかったあの息子が、麻雀ゲームをはじめて半日で設定をいじっている。

成長。

落涙。

我、落涙す。

しかし私はもうちょいゆっくりやりたいので打牌のスピードはもとにもどさせてもらった。セリフはたしかに煽られて悲しくなる(ちょっとポンしただけですぐにやいやい言うし、リーチするときとかわーわーうるさい)のでそのまま表示オフにした。

夜はNetflixで「監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影」を観た。

SNSの中毒性とか、GAFAのビジネスモデルではユーザそのものが商品であるとか、おう、なんか聞いたことあるぞ! ということを、元GoogleとかFacebookの人とかが話していくやつ。

この人Googleにいたのか、この人はInstagramに、ええのう~! かっこいいですの~~! よほど優秀なのでしょうのう~~~、などという目で見てしまいよくない私の性根があらわになった。

後半、情報のコントロールによって左右が分断するのに合わせ、人がターゲティングで陰謀論漬けにされる様子みたいなものが描かれて、いま一番怖いことは「内戦」だとの話しがあった。

2010年に「これからの『正義』の話をしよう」が大流行したとき、正義って結局どういうところに落ち着いたんだっけ、最近ちょうど正義と倫理を軽視しすぎてバックラッシュおきたみたいな状況を見たこともあって、映画もずっと正座で観ていた。

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パンデミックが起きたほうの世界線にいるので私は

作文教室の帰りにパスモでジュースを買っているね? 寝ている娘に聞くと布団の中から「買ってない」と返ってきた。

「ベランダの缶捨てにさまざまなジュースの空き缶が出ているのを見たのだよ」昨晩寝る前に見つけたのだ。

するとまた布団の中から「作文教室の帰りには買ってない」「公文」と早口の声がした。

娘は公文式の教室に通っており、そうか、まだ娘が小さく私が送り迎えをしていたころ、途中にある自動販売機でジュースを買って一緒に飲みながら帰ったことがあった。

「あ! あの自販機で」「そう」「買って飲みながら帰ってるの」「帰ってきてから飲んでる」

確かに娘は公文から帰るとすぐに自室に引っ込む。こっそり飲むのおいしかろうな。「お小遣いで買うならいいんだよ、急に捨ててあったからびっくりしただけだよ」

それから息子とパンを食べていると娘も起きてきて朝ごはん。

食後、ソファに置いてあるぬいぐるみを見て娘が「北条政子だ!」と言っている。

長くかわいがっているうちにだんだん日焼けして色が薄くなってきてしまっており、最近娘と相談して日中は布でくるんでおこうということになった。それでさっきくるんでおいた。

確かにそのつもりはなかったのだけど尼僧の頭巾みたいになっている。娘は日本史の学習漫画を愛読していて、「マンガ日本の歴史」的な要素に日頃から目ざとい。

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子どもたちが学校へ行き私は今日も在宅勤務。

午前中にリモートの打ち合わせに出ていて途中で服を後ろ前に着ているのに気づいた。リモートなので焦りの量はほぼゼロに等しい。

もし新型コロナウィルスが流行しなかった世界があったら、今日私は打ち合わせの途中で服を後ろ前に着ていることに気づくのだ。はっとして終わってすぐトイレに行って服から腕を抜いて回してなおす。

パンデミックが起きたほうの世界線にいるので私は、打ち合わせが終わるなりずんと服を脱いで方向を正して着なおした。

昼を食べて、食べたらず海苔にキムチを巻いて食べようとするとキムチの汁がこぼれるのでシンクに顔を出して食べた。

息子が帰宅し、居間の時計がおかしいという。地震のタイミングで電池がずれて動かなくなったのかも。この機会に時計を買い替えるのはどうかと息子は言った。居間の時計は気に入っているのだけどぼろぼろだ。

時計が壁に埋まっているやつ、あるじゃん。ああいう、おしゃれなやつとかどう。

「あ~~! 壁に刺さってるみたいなやつね、あるある!」「あるよね~!」「あるね、ある」「あるんだよ」「あるわ~」

ウォールクロックというものらしいが、ある~! という感動と共感が深まりすぎ、それを買おう、というのではなくただのあるある感激大会になった。私と息子のコミュニケーションによくある。

夜は炊き込みご飯とこんにゃくの田楽を食べて、それから息子が麻雀のルールをネットで調べ始めた。私がDSにソフトを入れっぱなしにしているので、あいたときにやろうという考えらしい。

そうか、息子はドンジャラで遊んだことが無いから麻雀というといちからルールを覚えなくてはいけないんだな。

それけっこう面倒なんじゃないかなと思ったが、そのうちDSで遊んでぐいぐい勝っていた。「フリテンってなに?」など都度聞くので教えた。教えられることがあるのはとてもうれしい。

それで思ったが、私も息子に数学とか理科とか教えてもらうのはどうだろう。中1なので私が学ぶにはまだ難易度的に間にあうんじゃないだろうかと思ったそばから自信がなく、今日のところは寝た。

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