まばたきをする体

わたしの目の前でみかんを怖がらないで

わたしはみかんがとても怖い。

みかんはたまにぼんやりした味でおいしくなかったり、ぶちゅっとつぶれているものに当たったりする。10代のころ妹が「みかんは怖いのがある」と言って、本当にそのとおりだと、以来ずっと怖がっている。産地に縁もなく良いみかんにあまり恵まれず生きてきた。

一方、こどもたちはとてもみかんが好きだ。

朝、大きなみかんをむこうとする娘を見てつい「大きなみかんって小さなのより一層怖いな…」と言ってしまった。

娘はきっとして「怖がらないで!」といった。喜んで食べようとする人を前に腐してはいけなかった。「わー、ごめん」と謝ると娘は「怖いといわれると私も怖くなってくるから」といっていた。

これは美味しい物であるという自信をそがれるのは寂しいことだ。悪かった。

子どもは学校へ。私も仕事。

出際に耳にイヤホンを詰めたら耳の穴があたたまりはっとする。こんなこと今まであったろうか。上着のポケットでちょうどよくあたたまっていたということかもしれない。本当に? と思い外すと寒かった。

会社では会議がありみんなでトッポとサラダせんべいを食べた。

終えて帰宅。途中で麩菓子を買った。

晩のご飯を炊くと、宿題を終えた娘が炊飯器の前を行ったり来たりして残り時間を見張っている。

「残りあと何分でしょうか?」「うーん10分?」「ぶー」「15分?」「ぶー」「13分?」「正解!」

「ねえねえ、残り8分からぜんぜん進まないよ。ずっと残り8分だよ」「1分間経ってないからじゃない?」

娘は普段宿題を終えるとYouTubeやテレビなどを観るのだが、炊飯器の残り時間のモニタがそれに優るコンテンツになる日もあるのだろうかな。

そうしてようやく炊けると娘はお釜を出して全員分のごはんを盛ってくれた。そうか私が今日はご飯を盛るぞ! という気持ちの高まりが炊飯時間をエンタメにしていたのか。

娘の盛ってくれたご飯を食べ、ぼやぼやして、交代で風呂に入り、パジャマに着替えた娘がパジャマ踊りを踊るのをはやし立て、すると息子も帰ってくる。

息子から最近クラスで流行している噂を聞いた。

デジタル時計の秒針やタイマーを観ているとぞろ目の時だけ時間の進みが遅いのだという。

いま一つ伝わりきらずにいると、タイマーを適当にかけて見せてくれた。あ、本当だそんな気がする。

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古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
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