まばたきをする体

もういない人

雨が降っていて、なるほどね、と思って起きた。

きのう冷蔵庫が壊れ、あわててベランダに要冷蔵の食品を保冷バッグに入れて出しておいた。保冷バックがぬれているのを受けての「なるほどね」だ。

冷蔵庫が壊れたとき、いまもう寒いしベランダに置いておけばいいじゃん! OK! OK! と思っていたが、そうか外は雨が降るのか。

これが無防備か、と感じ入った。冷蔵庫は食材をめちゃめちゃに守っている。雨はまだ弱くあれこれはそれほど濡れていなかったので食品は室内に避難、させたと同時にどばーっと雨が降ってきた。

おおお……お味噌がじゃぶじゃぶになるところだったわい。

昨日のうちにゆでておいた卵や、早く食べてしまいたいチーズ類で朝ごはん。子どもたちはすっと冷蔵庫を開けて「暗い!」と口々に言った。「そうだ!壊れたんだ!」

でもこれがまあ本当に「暗い!」という感じなのだ。無意識に期待した明るさが裏切られる。

子どもたちは学校へ。私も仕事。終えて、娘を学童に迎えに行って耳鼻科に連れて行く。耳鼻科はいままさにり患している人と、インフルエンザの予防接種に来ている健康な人がいて、全体的に元気に差がある。

娘は耳に違和感があると訴えていたが診察をしていただくと「風邪ひきました!」と先生。風邪症状なのだろうなとは思ったが、太鼓判をもらったかっこうだ。娘はスコープで耳の中を見ていただいたのがうれしかったようで、よく見えたね! と興奮ぎみだった。薬をもらった。

帰りにスーパーで買い物。なにしろ冷蔵庫が壊れているので気が引き締まっている。食べ切れるものだけを慎重に買い出し、冷蔵庫がない食品をかかえる余力がない気分を完全に満喫した。

その気分とは全く関係なく、賞味期限の迫った串のみたらし団子3本セットが半額になっており44円で買った。冷蔵庫がなくてもみたらし団子が安く買えてうれしい気持ちは変わらないものだ。

帰って娘とご飯。娘は食後に冷蔵庫を開けてまた「暗い!」と驚いていた。

私は意外にすぐに慣れて、暗い冷蔵庫を開けたのは壊れてから3回くらいだろうか。なんだかもうすっかり死んだ人のように、いない人のように感じている。冷蔵庫を視界に入れる回数が激減した。

息子も塾から帰って来た。息子はなんでか小さいころから家からお金が失われることをおそれており、44円のみたらし団子を祝福してくれた。

そして冷蔵庫を開けて「暗い!」と言った。

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