まばたきをする体

スピードくじが引ける時期がある

羽織りものを探してクローゼットを開けると、存在をすっかり忘れていた、しかもこの季節にしか着られない上着が数着かけてあって冷や汗が出た。

着ないまま季節を逃がしてまた来年になるところだった。あぶねえあぶねえ。着損じることのないように表に見えるようにかけた。

子どもたちは学校に行き、私も仕事。昼食をローソンで買ったところ、キャンペーンのスピードくじを1枚引かせてもらえた。

コンビニで700円以上買うとくじが引ける時期が、いつからか私たちの世界には表れた。これまでにペットボトルのお茶とガムシロップとソーイングセットを当てたことがある。賞品に意外性がある。

よほど人気があるキャンペーンなのだろう。くじが終わると「当店のスピードくじは終了しました」という張り紙が張り出される。

くじの入った箱はには二つの穴があり、片方は「一般くじ」もう片方は「酒くじ」とある。くじに酒バージョンがあるのははじめて見た。せっかくなので酒の方に手を入れたら、金麦の350ml缶が当たった。

……オオオオオオオオオオ。最高だ……。これが…これが酒くじか……。

ありがたくカバンに入れてまた仕事をして帰宅。

娘も帰ってきたので玄関に出て迎えるとやぶからぼうに「まばたきをするとシワが増えるんだって」と言う。

そうなのか。「でもまばたきをしないわけにはいかないね」と言うと、「うん、だからせめて『まばたきをたくさんする大会』とかそういうのは開かないようにしたほうがいいよ」とのことだ。開かないようにしよう。

晩は肉も魚も買い忘れ、ミートソースの缶詰を開けてご飯にかけてとけるチーズを乗せて焼いてなんとかした。私の「なんとかする」においてはかなり上位に入る「なんとかする」だったと思う。

息子も塾から帰ってきた。学校で友達と語彙力が欲しいということを話し合ったそうで、以前同じようなことを言うので買ったもののほとんど読んでいなかった語彙力を増やすためのドリルみたいなものを引っ張り出して開いていた。

息子と友人たちの間では数カ月にいっぺん、語彙力ブームがくるようだ。

夜はうやうやしく金麦を開けた。ただでもらった金麦だ。

------
11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します。日記の本を持っていきます。
------
古賀及子(こがちかこ)・まばたきをする体とは
お仕事のご連絡
Twitter @eatmorecakes
Instagram @eatmorecakes