まばたきをする体

おい! Google

起きてから家を出る速さには自信がある。しかしこのところ自信が能力を上回ってしまったのかうまくいかないことが何度かあった。

油断せぬよう目覚ましの鳴るのに合わせてシャッと起きて洗濯、簡単に朝ごはんの支度をして息子を起こした。

おのおの整え時間通りに出発。よし。

息子の塾のテストがあって私もついていく。裏で塾による父母説明会もあるうえ父母説明会終了後には近くの私立の中学校の説明会があり友人に誘ってもらっているのだ。

会場に到着すると息子はいつものようにサッと子どもの流れに乗っていった。毎回、嫌がらずに会場に吸い込まれていく、それだけで最大級に感心する。

父母の説明会に出るのは3回目だが、中学受験というものを教えてくれるので本当に本当に興味深い。

中学校に入るのに試験を受けるというのだけではまるで語りつくせない、これは完全に独特の文化だ。用語もとても独自で良い。たとえば「1日校(ついたちこう)」「2日校(ふつかこう)」という言葉がある。

東京と神奈川の私立中学で2月1日に入試を実施する学校を「1日校」、2月2日に実施する学校を「2日校」というのだ。

「2月1日に試験を実施する学校」ではだめなのだ。「1日校」なのだ。

最高にしびれる。

説明は塾の先生がしてくださるのだが、毎回「とにかく子どもさんをねぎらってください、彼ら本当に本当にがんばっています」とおっしゃる。何年でもなんどでも言い続けないとつい親は子に期待しすぎてねぎらい忘れるのだろう。説明会のあとはいつも ねぎらうぞ! という気持ちで盛り上がる。

今回もいろいろと見知らぬ文化の一端にふれ興奮のひとときだった。

終わって、友人と合流して中学校の説明会も覗いてきた。大学付属の中高一貫校だそうで、生徒の9割近くがそのまま付属元の大学に進学するのだそうだ。おお……私は中学から受験して高校に入り指定校推薦で短大に行った。十代のころは未来がどうなっているか何一つわからなかった。そういう者からするとこれまたまるで未知の文化だ。

ちなみに付属小学校もあり、小学校から大学までずっとそのままという子もいるんだという。

そうなってくるともう自分のミドルネームに学校名が入るくらいのアイデンティティになってしまうのではないか。大丈夫なのかそれは、いや、大丈夫なんだろうな。そういう種類の誇りもあろう。

すごいね、すごいよね人生だよねと 友人と 言いあって解散するころ息子のテストが終わりピックアップして帰る。

私は10時ごろ学校の説明会に出ながらお腹がすき、ああ今朝の朝ごはんは少なかった、いまごろ息子もお腹をすかせているだろうと案じていたがやはり息子もはらぺこだったらしい。

最寄り駅について近所のお蕎麦屋で息子はひやしきつねを、私はタンメンを食べた。古くからある風情の蕎麦屋はとてもよく混んでいる。休みの日だからか酒を飲む人が多い。

息子は最高にうまかった、と喜んでいた。とてもうれしい。よかった。

そのあと息子は近所の神社の秋祭りにでかけ、私は妹にあずかってもらっていた娘を迎えに妹の家へ。

実家で晩ご飯に呼んでもらい、妹と姪っ子と娘と行って手巻き寿司を食べさせてもらった。

実家に住んでいる弟が会社でGoogle Homeをもらったそうで実家にもいまやGoogleさんがいる。

天気くらいしか尋ねていないというので、ラジオが聴けることを教えたら喜ばれた。

OK Google」ってなんだか照れるのよと母が言うので「ねえ Google」でもいいみたいだよ、というと、妹が呼びかけるのでもいいの? じゃあ「おい! Google」でも? といって、急にGoogleが指名手配犯みたいになった。

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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します。日記の本を持っていきます。
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