まばたきをする体

普通の少女でもできること

すすぎ1回でもよしとする洗剤の残りが少ない。これを使い終わると、すすぎ1回ではだめな洗剤のストック(新聞やさんがくれた)が待っている。すすぎ1回だとずいぶん時間が短縮になるので助かっていたのだけどな……。

こういうときに貴族はすすぎ1回でもいい洗剤を買い足すのだろう。でもあるんだ、あるんだよ、うちにはすすぎ1回ではだめな方の洗剤のストックが。

あるものは使って生きていきたい。そういうことに喜びを感じて生きてきたはずなのだが、今回ばかりは時間が短くて済むすすぎ1回の洗剤への未練が強い。

子どもたちも私も、人々は起きて静かにご飯を食べ、そしてそれぞれの現場へとでかけた。私も仕事。

仕事を終え、暑いので梨味のアイスを買って帰ってきた。

子どもの人たちも家へと戻ってきた。わたしたちは日が明けると方々へ散り、日が暮れるとまた集まる。

出て行った人が毎度毎度同じ所へ帰ってくるのだ。それを許しあう関係というのはやっぱりかなりすごい。間違って1軒隣にずれただけで状態として「あり得ない」ことになる。

娘はヨーヨーをしていた。ツーっと玉の部分を落とすと玉が光る。

「ヨーヨーを光らせるのは普通の少女でもできることなの」

と言っていた。このヨーヨーは光るそして自分は普通の少女である。どちらもわりと普通のことなのだが合わせて言うとかっこいいな。

世の中のお盆休みというのがだいたい終わるようなので、記念に晩はめずらしく外にご飯を食べに行くことにした。

子どもらの希望をとり、和食のファミレスに向かう。入口でいま出て行こうとする人たちが「ここは『華屋与兵衛』よね」といいながら出て行った。「藍屋」と書いてあるんだけど…中で、さてはここは「藍屋」ではなく「華屋与兵衛」だな? と思わせるなにかあったんだろうか。

ふつうに中は藍屋だった。

順番を待っているあいだ、娘はレジ横のおもちゃの棚を見ていた。「お、おかあさん…!」と目を丸くして呼ぶので何事かと思って指さす方をみると、金色のキーホルダーにコインのような丸いものがぶら下がっており、コインの中心に「令和」と書いてあったのだった。確かにこれは大変だ。

ふかふかの席に通されうれしい。娘は最初お子様ランチ的なものを選ぼうとしたのだが、おもちゃがついてくるという表記をみつけてやめていた。小学生なのにおもちゃをもらうのははずかしいとのことだ。

平和にご飯を食べた。

そういえば昼に買った梨のアイスがあるなと思いながら帰宅すると、ちょうど宅配便で親戚から梨が届いた。

本物の梨を前にして梨フレーバーのアイスの価値が私のなかで下がっていくような、いや、アイスなのだから価値は保たれている大丈夫だとはげますような気持が起こり、価値観が混乱した。

さらに自分で作った自費出版の本も段ボールで2箱届いた。先日届いた別の本の表紙がまぬけでひどかったので今度こそと思ったが今度のはもっとまぬけでしみじみがっかりした。

がんばろう! と思って元気を出した。3冊目の表紙はプロに頼む。やっとわかった。それしかない。

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イベント:2019/08/25(日) COMITIA129 「まばたきをする体」Q01a
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