まばたきをする体

全力で走りそして二人は出会った

寝坊してしまった。あばばあばばと思いながら大急ぎでお弁当を作り、お化粧をして洗濯を干して、ウォー間に合ったと思ったが、子どもたちはそれからゆっくり起きてきてももろもろ十分間に合っていた。

大人はやることが多いな。 私はもしや子どもたちに家事をまかせなさすぎだろうか。

ぼやぼや朝ごはん。息子はAmazonプライムアメリカの映画をよく観ているが、最近は英語だけ聞いて字幕を見ないようにしているのだそうだ。英語を学んでいるわけでもないはずなのだがなぜ。

アメリカの人はオーバーアクションだから身振りでなんとなくわかるような気がするし、でもぜんぜんわかんなくてウケるから」だそうだ。風情あるなあ。

しばらくして、あっ、しまった、ゴミを出しそびれていた! と気づいた。回収の時間を30分は過ぎている。

ダメ元でゴミ置き場へかけていくと、いままさに回収車が来ているところだった。見えるが少し距離があるので、わー、残念と引き返そうとすると、係のおじさんがこちらへ走ってくる。

一瞬「?」という気持ちで、そのあとすぐ、あ! 私のゴミを持って行ってくれようとしているのだ! と気づいた。

あわてておじさんのほうに私も全力で走って、そして二人は出会った。

おじさんは笑って「おはようございます!」 と言ってゴミを受け取ってくれてすぐにまた収集車の方へかけていった。

ありがたみが染み渡りきり、帰って子どもたちの頭をなでまくった。

全員解散してそれぞれの持ち場へ散り、私も会社へ。ヤーヤー仕事をして帰った。

息子と娘も帰ってきて、私は肉を焼いてご飯の支度をした。みんなで静かに食べて、そのあとそれぞれ宿題をしたり本を読んだりYouTubeを見たりして、そろそろ風呂にでも入ろうかと娘をさそうと、娘が急にしょんぼりしている。そして

「ぷちぽが貯まらないんだよう」

といった。

ぷちぽ。

なんだろうなそれは。

抱きしめ頭をなでてやりながら「ぷちぽってなに?」と聞くと、彼女がやっているタブレットの通信教育で学習を終えるともらえるポイントのことらしい。

わたしはがんばって勉強してるのにタブレットでうまく入力できないことがあってそのせいでもらえる「ぷちぽ」が減ってしまうことが多い、のだそうだ。

そんな悩みがあったとは。彼女にとって「ぷちぽ」というものがとても大切だと分かったが、私にとっては「ぷちぽ」はだいじな人がだいじにしているものなのでだいじ、という、価値がまだ間接的だ。

「ぷちぽ」という名前の独自さと、その独自なネーミングのものに夢中な娘がかわいらしいというのも手伝ってとにかく懸命になぐさめたが少し面白いなと思ってしまっていた。

しばらくなぐさめたら気をとりなおしていてよかった。風呂からあがって「ぷちぽ」についてよく教えてもらった。

もらえなかったぷちぽの代わりに、「おかぽ」 (おかあさんポイントの略だ) をいくらでも上げようといったが「いらん」とのことだ。

子どもたちは寝て、私は台風で風が強いので落ち着かずビールをたくさん飲んだ。

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イベント:2019/08/25(日) COMITIA129 「まばたきをする体」Q01a
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