まばたきをする体

「はい、論破」みたいに幸せを

テレビがついたのかな? と思ったら起きて目が開いたのだった。

息子は作文の宿題があるらしく悩んでいた。だいたいいつも居間のちゃぶ台で勉強するのだが辞書やら本やらであたりがかなり散らかっている。

「文豪みたい」と言っていた。原稿用紙を丸めて背後にポイポイしいないと。

そういうシーンとしての慣用表現みたいなものを子どもたちはいつのまにか心得ていて、へえ、と思う。

息子が2歳か3歳くらいのころ、絵本に荷物として描かれた唐草模様の風呂敷包みを指さして「どろぼうの」といったことがあった。

実際にはそのようなどろぼうがいないにも関わらず、記号として唐草模様の風呂敷づつみがどろぼうの持ち物だということをこの子はもう知っているのか! と驚いた覚えがある。

朝ごはんの途中も息子は箸をとってもらおうとして「メス!」と言っていた。病院コントだ。

子どもらは学校へ行き、私は仕事。

夕方になり学童帰りの娘と落ち合って耳鼻科に寄り、娘は公文へ、私は買い物に行った。それぞれの持ち場ですごす家族が必要なところだけ合流するの、興奮する。

帰ってずっと使いそびれて冷蔵庫のなかにあった水煮の大豆とこんにゃくを煮た。

こんにゃくは豚汁を作るときに使おうかな、大豆は衣をつけて甘辛く炒めようと思いながらずっと置いてあってじわじわと気が焦ってきていた。一緒に煮ればよかったのだ。すっかり安心した。しかもうまく煮えた。

娘が公文から帰ってきた。迎えに行きそびれたので玄関まで迎えに出たがちょっと気恥ずかしく、手で眼鏡を作った。

娘も手で眼鏡を作ってじわじわとふたり詰め寄ってキャッキャした。

しばらくそれぞれ家事と宿題をやっていると娘が上半身あおむけでソファの下にもぐっていた。

こちらに向けて手を出している。なにか取ってほしいようだ。

「自動車整備の人だよ~! スパナ取って!」

おお、なるほど!

ふふふ、こういうの、なにかの映画の仲間の1人の初登場シーンでありそう。

遠景から主人公とのやりとりではじまって、主人公が工具みたいなもの(娘のいうところのスパナ)を渡す、しばらくしてなにか重要な発言を主人公がしたところで「はあ?」みたいな感じで車の下から顔が出てくるんだよね。

娘は寝て、息子が塾から帰ってきた。

ご飯を食べて、アイスを食べて、「はい、幸せ」と言っていた。「はい、論破」みたいな感じで。

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デイリーポータルZの記事一
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