まばたきをする体

池袋のキャッチの男に偶然その場で一矢報いる

コミュニケーションにおけるいやな思い出というのは忘れたいのについ反芻してしまう。

いやな思いをしたという以上に、いやな思いをしたにもかかわらずへらへらやりすごしてしまい一矢報いれなかったことへの後悔で忘れられないんだと思う。

こんなふうに言い返してやればよかった、そうすればああなったはずだと夢をふくらませてしまうのだ。

夢ふくらみすぎて夢のなかのFacebookでその話をみんながシェアしはじめるくらいのものである。

 

シェアされるほどのロマンはないが、しかし偶然にも後悔することなく一矢報いたなあということがあってはっと思い出した。

もう20年くらい前だと思うのだが、当時池袋には(というか繁華街全般だろうか)チラシ配りをよそおいつつ、配っているチラシをうけとるとしつこくなんらかの勧誘をしてくるというタイプのキャッチがよくうろついていた。

ある日うっかりチラシを受け取ってしまった。するとたしか夜のアルバイトか何かの勧誘がはじまった。さしあたって興味のない話だったのですみません急いでいてとさえぎるとキャッチの男性は舌打ちをして

「チラシ返して」

という。

怖い。

そして、理不尽である。

理不尽だがやっぱり怖いのでチラシを返そうとすると、チラシが手からすべりふわふわ道に落ちた。

ちょうど、リレーでバトンが落ちるような感じだった。

運動神経がわるいのだわたしは。

そしてこれ、様相としては「返して」といわれたことに腹を立ててチラシを道に捨てたようになったのだ。

 

キャッチの男がそのあとどうしたかは知らない。走って逃げた。

なにか悪態をついただろうか、チラシは拾っただろうか。

わからないが、今でもこれだけは嫌な思いに間髪入れずにその場で一矢報いた希望あふれるエピソードだ。

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