まばたきをする体

パンがないなら餅を焼いた

パンがないなら餅を焼いた。

切餅がのこり4個あったので子どもたちに2つずつ。私は芋をふかして塩をして食べた。

このところ寒くなってきて、娘が起毛のパジャマを着だした。起毛の衣類には、ほこほこが裏についているやつと表についているやつがある。娘のは表がほこほこしている。

いつか「裏起毛」という言葉を知ったが、あれは自分にほこほこが当たっているのでそれはもう暖かいのだろう。表が起毛だとほこほこは自分には当たらないが、その分目にもとても暖かい。娘を見ると暖かそうで良い。

子どもらは学校へ。私も仕事。やーと推し進め終えて帰る。

息子がちょうど塾に行くことろで、リュックが重すぎて背負うヒモの部分が切れそうだと見せてくれた。息子の塾の荷物は異様に重い。どうも必要のないテキストを何冊も毎度運んでいるらしい。やってる感は大事だからな。リュックのひもは縫うか別のにかえるかしようと話した。

娘が帰ってきたので一緒に買い物に出た。少し雨が降っている。娘は街灯の下へかけていって上を見て「降ってる降ってる」といった。

夜暗いとき、街灯のついたところで上を見上げると降ってくる雨粒が光に反射してよく見えるんだそうだ。

やってみたら確かに見えた。でも街灯がとてもまぶしくて目がちかちかした。

スーパーに行ってあれこれ選んで、レジでレジ袋をキリっと断って持ってきたリュックに買い物をぎゅうぎゅうつめていくが最後食パンが入りきらず、でも「すみませんやっぱレジ袋くんさい」というのは恥ずかしくて最後の食パンはつぶしてつめた。

帰ってご飯を食べて、娘が寝ると息子が帰ってきて
Martin Garrix「Oops」をお母さん好きそうとすすめてくれた。

これは……好きだ……! 私の音楽の趣味はもう息子にはだいたいばれたようだ。



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11/24(日)文学フリマ東京に「まばたきをする体」で出展します。日記の本を持っていきます。
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ごちそうさま弟子た

むかし作ったフォトショップのデータを探していて、バックアップしたものをあたるが入っていない。古いデータのなかにバックアップが取り切れていないものがあるようだ。

一番はじめに買ってまだ生きているハードディスクをパソコンにつないで探す。2000年代前半のデータに「漂着テレビ」というフォルダがあり、開くと海辺に打ち上げられたテレビの画像がたくさん入っていた。

なんだろう、全く覚えていない。

目的のデータは見当たらなかった。しかしバックアップが取り切れていなかったデータがあるのが分かったのはよかった。まとめてネットに上げた。

そうして朝からぐんぐんデータをアップロードしていると子どもたちが起きてきた。

パンを焼いて朝ごはんにした。食べながら娘が「『ごちそうさまでした』のなかには何が入っているでしょう」という。

どういうこと? と息子が聞くと「『れいぞうこ』には『ぞう』が入ってるみたいなこと」というので、「『ごちそうさまでした』のなかには『した(舌)』が入ってる」と私がいうと、娘はうん、それもある。という。そして、私が考えていたのは「でし(弟子)」でした! と正解を教えてくれた。

ごちそうさま弟子た
ごちそうさまで舌

唐突さを味わった。

ばたばた支度をして、午前中のうちに子どもらと3人で実家へ。母に昼食にマカロニグラタンをごちそうになった。

母はむかしからよくグラタンを作る。高校生のころ町会のあつまりの手伝いをしたときに近所のおばさんに「晩の炊き出し何がいいと思う?」と聞かれ「グラタン」と答えたことがあった。

おばさんは驚いて「グラタンはたくさんいっぺんに作れないよ! 豚汁とかそういうのじゃないと」と笑って、恥ずかしくなったのを思い出した。

炊き出しにグラタンを所望する分かってなさ。若さとはこういうことではないか。

娘を実家にあずけ、午後は息子と小学校高学年向けの公演を聞きにいった。早めについたので始まるまで時間があり、息子にさそわれ絵しりとりをして待った。息子は「ランドセル」が、わたしは「ねぎ」の絵がうまく書けた。

息子は塾に行って、私はそのまま友人のファッションブランドの来春の展示会を見に下高井戸へ。

美しくてかわいらしい衣類をたくさん見せてもらい、試着もして、同行の友人らと「似合う似合う」と褒め合い、偶然居合わせたまた別の友人の赤ちゃんをよしよしして、きれいなお菓子をたべさせてもらい、短いながらに感動的な時間だった。

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今ここでこの大太鼓を打ち鳴らしてしまったら

少し早めに息子が学校へでかけ、娘も支度をして行かんとするのでランドセルを背負わせようと持ち上げるととても軽い。

何か足りないんじゃないのというと、今日は一科目いつもより少ないからといって出て行った。居間に戻ると連絡帳と宿題一式がすべておいて行かれているのであった。

子どもらがいなくなり家が静かになった。

自分以外誰もいなくなると家が広まる。ほかに人がいるとたとえ見えない別室にいたとしても気配がして狭い。

用事のついでにとなり街へ。この街には野菜を全力で売るセブンイレブンがある。野菜はもちろん果物もとても安い。みかんとズッキーニを買った。会計がセブンイレブンのレジなのがすこし妙だ。PASMOで支払った。

帰って小学校の授業参観に出てきた。息子は算数を、娘は音楽でリコーダーを吹いていた。

最初はばらばらだった子どもたちのリコーダーの演奏だが、徐々にまとまり授業の最後には息継ぎもぴったり合ってとても良い演奏になっていた。先生がピアノの伴奏を付けるといよいよ曲らしい。

私の目の前に大太鼓があって、ふさふさがついたばちもあった。気持ちが高ぶって今ここでこの大太鼓を打ち鳴らしてしまったらどうしよう、いやまさかそんな、と考えていた。

帰るとしばらくして子どもたちも帰ってきて、よくねぎらってセブンイレブンで買ったみかんを食べた。

息子は塾へ行き、私と娘は友人のいるお店へ。期間出展しているそうで顔を出してきた。

彼女はとてもおしゃれで大変な人気の雑貨をあちこちで売り歩いている。朝から晩まで店番をしていると暇な時間もあるらしく、そのときは店内でかけているBGMに合わせて歌ってすごしているのだそうだ。

ユーミンとかチャゲアスとか、私が行った時間帯は山下達郎がかかっていた。山下達郎はなんて歌が上手いのかと友人は聴き入り言っていた。

娘は猫のシールをもらって、私はバッジをもらって帰宅。思えばこの友人は会うとバッジをくれる。以前は映画「ランボー」のバッジを、今回は三角の黄色いバッジをくれた。

前髪が伸びすぎているがつい美容院に連絡しそびれている。

自宅の近くに新しい美容院ができて、もしやいま誰もお客がいなかったら飛びこみで前髪だけ切ってはもらえないかと思ったが通りがかったらお客さんがいた。

娘にある別の美容院を提案されたが、そこは一度お願いしたところかなりざんばらな前髪になったのだ。「失敗したことがあるからな、あそこは」といいうと娘は「でもその美容師さんにとっては成功だったのかもよ」といっていた。

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ドンピシャで正答

死んだ祖父はもともと佐賀県の出で、佐賀の北島というお菓子屋の丸ぼうろをひいきにしていた。

贈答品としてよくあちこちに送っていて、お中元やお歳暮の時期に遊びに行くとついでに自分のところにも買ったらしい丸ぼうろがよくあって食べさせてもらった。ざくざくした食感で卵の味が強くそしてとてもとても甘い。祖父は甘いものがとても好きだった。ビールが苦手でよくサイダーを飲んでいた。

祖父が死んだあとも祖母がこの店の品を贈答に使う習慣を引き継ぎ、そして祖母が死んだあとは母が引き継いだ。

のだが、母は今年別のメーカーのに変更してみようと考えているそうだ。なんか甘いじゃない? というのが言い分で、それでネットで評判の良いメーカーの丸ぼうろを取り寄せてみたと、しかしあまりおいしくなかったという。

うちにもひと箱もらったのでここ数日毎朝食べている。確かに北島の丸ぼうろような強烈なアイデンティティにとぼしく、丸い焼き菓子、くらいのぼんやりした印象ではある。

とはいえ「家にある」というのはお菓子を食べる動機として非常に大きく、特に文句もなく私も子どもたちも食べていた。

今朝、息子が食べていて「この丸ぼうろ袋に『包装の内側に製品が付着することがあります』って書いてある」という。

そうなのだ。この新しくやってきた丸ぼうろはとにかく個包装の袋にくっついてうまくはがれないのだ。見ると確かに包装紙にそう書いてあった。「くっつきやすいってこと、自分でも気づいてたんだな」と息子は言った。

くっつきやすい丸ぼうろを食べた子どもたちは学校へ行き、私も仕事。

午後の会議の前に上司が「タピオカミルクティーを買いに行こうかな」というと同僚たちが、おれも私もと会議室の狭い出口を先を争うように出て行った。

タピオカミルクティーを吸って会議も滞りなく終わって帰宅。子どもたちも帰ってきた。

娘は英語学童で「What is expensive?」という質問に答える学習をしたんだそうだ。「みんな着物とかジュエリーって答えてたんだけど、私がシャインマスカットって言ったら先生たちにウケたんだよ」といっていた。

ふふふ。だってそれドンピシャで正答だもの。

そのあと、娘は息子に「BOOM」って曲を学童で聴いたけどかっこよかった、と教えていた。息子がGoogle Home に「BOOM流して」というとTHE BOOMの「島唄」が流れてしばらく全員で聴いた。

とてもいい曲だったが娘がかっこいいといったのは、Tiestoの「BOOM」だということが後で分かった。

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スピードくじが引ける時期がある

羽織りものを探してクローゼットを開けると、存在をすっかり忘れていた、しかもこの季節にしか着られない上着が数着かけてあって冷や汗が出た。

着ないまま季節を逃がしてまた来年になるところだった。あぶねえあぶねえ。着損じることのないように表に見えるようにかけた。

子どもたちは学校に行き、私も仕事。昼食をローソンで買ったところ、キャンペーンのスピードくじを1枚引かせてもらえた。

コンビニで700円以上買うとくじが引ける時期が、いつからか私たちの世界には表れた。これまでにペットボトルのお茶とガムシロップとソーイングセットを当てたことがある。賞品に意外性がある。

よほど人気があるキャンペーンなのだろう。くじが終わると「当店のスピードくじは終了しました」という張り紙が張り出される。

くじの入った箱はには二つの穴があり、片方は「一般くじ」もう片方は「酒くじ」とある。くじに酒バージョンがあるのははじめて見た。せっかくなので酒の方に手を入れたら、金麦の350ml缶が当たった。

……オオオオオオオオオオ。最高だ……。これが…これが酒くじか……。

ありがたくカバンに入れてまた仕事をして帰宅。

娘も帰ってきたので玄関に出て迎えるとやぶからぼうに「まばたきをするとシワが増えるんだって」と言う。

そうなのか。「でもまばたきをしないわけにはいかないね」と言うと、「うん、だからせめて『まばたきをたくさんする大会』とかそういうのは開かないようにしたほうがいいよ」とのことだ。開かないようにしよう。

晩は肉も魚も買い忘れ、ミートソースの缶詰を開けてご飯にかけてとけるチーズを乗せて焼いてなんとかした。私の「なんとかする」においてはかなり上位に入る「なんとかする」だったと思う。

息子も塾から帰ってきた。学校で友達と語彙力が欲しいということを話し合ったそうで、以前同じようなことを言うので買ったもののほとんど読んでいなかった語彙力を増やすためのドリルみたいなものを引っ張り出して開いていた。

息子と友人たちの間では数カ月にいっぺん、語彙力ブームがくるようだ。

夜はうやうやしく金麦を開けた。ただでもらった金麦だ。

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異常の原因が分からないまま通常に戻る

息子は風呂に入る前に冷水を体にぶっかけているのだそうだ。

はじめて聞いた。いつからやっているのかというと、3年前くらいからだという。冷水をあびてから熱い風呂に入ると冷えた体が急にあたたまって気持ちが良いということに気づいたらしい。

大丈夫なのかそれは。なんか血圧とか、危なくないのか。びっくりしたが、現状健康なので大丈夫なんだろう。

しかし全く知らなかった。各種健康法の好きな塾の先生から冷水浴をすると良いと言われた。それを伝えると「俺それもうやってるな」と言い出し判明したのだ。この会話がなかったら一生知らなったかもしれない。

息子も娘も、フィジカルな快感を探り出す頃だ。

子どもらは学校に行き、私は会社に休みをもらって病院へ。3か月に一度受けている子宮頸がんの定期健診がやってきた。

毎度お世話になっているおじさん先生は今日もお元気だ。今回で検査に通い出してからちょうど1年になるんじゃないか。当然私は1つ年をとって、同じように先生も年をとったんだなと思う。

病院も美容院も商店も、通う先はつぶれるまであり続けるが、中の人は歳をとり、自分も同じく年をとる。時間にこそ一体感がある。

帰って掃除をしたりたまった洗濯をしたりあれこれして、晩ご飯の買い出しに行ったスーパーで破裂音がした。

パーン! とかなり大きな音で、私はちょうどレジで商品をスキャンしてもらっている最中だったのだが、スキャンの手を止めた店員さんが「え? こわい」と言った。

「なんでしょうね?」と私も言うがそこから何もなく、一瞬静かになった人々はまた元の動きに戻った。ディスプレイの風船でも割れたのだろうと私は納得したし、みんなそういう気持ちだったんじゃないか。

帰りながら、でも、ディスプレイに風船なんてあったかな? と思った。なんだったんだろう。

何か異常が起こりその原因が分からないまま時間の流れが通常に戻るということはたまにある。

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昨日の私が私の尻を温める

起きてトイレで便座にすわったらふぁっと温かく、そうだ昨晩便座の電気を入れたのだと思い出して顔がにこっとなった。8時間前の私が私の尻を温めている。

起きて息子が寒い寒いと言うが半そでだ。長袖を着ると暖かくなるよというと着て、もう騒がなくなった。娘は静かに新しい長そでの服をおろして着ていた。

子どもらは学校へ行き、私も仕事へ。会社の近くの京樽ねぎとろ丼100円引きセールをやっており奮ってお昼ご飯に買った。昼休みに写真を撮ってから食べて満足だ。

午後の会議でチームにあるデータを共有するはずが手のあやまりでそのねぎとろ丼の写真をアップしてしまった。すみません今ねぎとろ丼の写真を送ってしまいましたというと同僚が「やったー!」とよろこんでくれた。

ゆかいで気の良い人たちなのだ。

みんなでおかきを全力で食べて会議は終わった。また別の同僚が梨をくれた。

帰りに英語学童に娘を迎えに寄る。建物から出ると娘が「私は夏のにおいと冬のにおいがわかるんだよ」と言った。

私も分かる! というと、だよね! と言いながら歩道の縁石の上を歩いて行った。

帰りに寄ったスーパーは台風の影響かまだあれこれと商品が品薄だ。カップ麺や水がまだすくない。

帰って娘とご飯。きのう母がくれた肉の塊の半分を茹で豚にしておいたのを食べた。茹でながら、食べるときはポン酢をかけようと思っていたのに土壇場で塩を振ってしまった。ついポン酢より塩が好きなもので、ポン酢にはなかなか活躍の場を与えられていない。

風呂に入っていると電話があり、塾へ行った息子からの帰宅の連絡だと思われ娘に出るよう頼むと、電話をとって「はい」とだけ言うのが聞こえてもう静かになった。

会話みじかくないか!? と娘に聞くと、お兄ちゃんが電話に出た、もうすぐ帰ってくるだろうという。

その通り息子は帰宅し、名乗ったら電話を切られたとのことだった。娘は「俺だけど」「はい」それで充分帰宅の知らせと分かったからいいと思ったそうだ。

スパイなのかもしれない。

電話の応対というものを話して教えた。

それから同僚のくれた梨の袋をあけたら思った3倍でかかった。大きな品種の梨らしい。梨が大きいということほど豊かなことはない。梨が大好きなのだ。

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